真面目で働き者の一家
北九州市小倉南区にあるマクドナルドの店内で、中学生の男女が殺傷された事件は師走の日本を騒然とさせた。男子学生(15)に対する殺人未遂容疑で、無職の平原政徳容疑者(ひらばる・まさのり=43=)が逮捕されたのは昨年12月19日のこと。そして、年を跨いだ2025年1月9日、平原容疑者は中島咲彩(さあや=15=)さんへの殺人容疑で再逮捕されたのである。
事件現場となった「マクドナルド322徳力店」から直線距離で900メートルほど離れた長尾地区の一軒家に、一人で暮らしていた平原容疑者。逮捕直後の取り調べで「その行為をした」と容疑を認めたものの、いまだ凶行に至った動機は明らかになっていない。地元では知られた地主一家に生まれ、“幸せそうな家族”まで手にした男は、なぜ凶悪犯罪に手を染めたのか――。
「政徳くんのおばあちゃんは、守恒(もりつね)地区に広大な農地を所有する地主の一人娘で、そこに結婚してやってきたのが平原姓のおじいちゃん。二人は一生懸命、米や野菜を育てる農家さんでね。その一方、いまの北九州市立大学のグランド横の土地を駐車場として貸したり、所有する土地をうまいこと利用していました」
そう語るのは、平原容疑者が生まれ育った守恒に古くから暮らす近隣住民だ。ちなみに守恒は、逮捕時に平原容疑者が一人で暮らしていた長尾から北東方向に車で10分ほどの距離に位置する。平原容疑者の祖父母は3人の子宝に恵まれたそうで、
「子供たちが大人になると、おじいちゃんは自分の長男と次男にそれぞれガソリンスタンドを与えた。親心に、農業以外の仕事を持たせたかったのだと思う」(同)
大黒柱だった父親が急死
長男は守恒の実家裏で、次男は守恒からほど近い蒲生地区でそれぞれガソリンストンドを営んでいた。長男夫婦には4人の子供がおり、末っ子として生まれた初めての男の子が平原容疑者である。
「お父さんは4人の子供を育てるために、奥さんと休みなくガソリンスタンドで働いていて、そのうち、娘さんの一人も手伝うようになった。平原さんとこは皆、真面目で働き者の一家なんよ。お父さんは物凄く優しくて、お世話好きな人。忙しく働く傍ら、地元の子供らに野球を教えたり、自分でもおっちゃんらのソフトボールチームに入るなど、地域活動にも参加していました」(同)
平原容疑者自身も幼い頃は、地元の子供たちと一緒に野球を習っていた。しかし、幸せな家庭に突如として転機が訪れる。一家の大黒柱である父親が急死したのだ。
「あれは、政徳くんが中学生ぐらいのころ。肝臓を悪くしてお父さんが亡くなりました。たぶん働きすぎが原因じゃないかな。決して、酒浸りとかアル中というわけではないんだけど、仕事に疲れたら『くたびれて飲んじゃう』と愚痴をこぼしていたこともあったそう。40歳ちょっとぐらいで亡くなったと思う。お父さんが亡くなるとガソリンスタンドを畳み、そこにマンションを建てた。加えて、自分の息子である夫に先立たれた奥さんを不憫に思ったのか、おじいちゃんが長尾に一軒家を建ててあげたと聞いています」(同)
この“長尾の一軒家”こそ、のちに平原容疑者が相続し、逮捕時に一人で暮らしていた自宅なのだが、一旦、父親が亡くなった当時に話を戻そう。当時、平原容疑者が通っていた実家近所の理容室オーナーが当時の印象を明かす。