米鉄鋼大手USスチール買収を巡り、日本製鉄とバイデン政権の対立が深まっている。バイデン大統領が買収禁止を命令したことに対し、日本製鉄とUSスチールは訴訟を提起。イエレン米財務長官は審査の正当性を主張する一方、USスチールCEOはトランプ次期大統領による判断覆しに期待を寄せている。今後の展開が注目される。
イエレン財務長官、買収審査の正当性を強調
イエレン米財務長官はCNBCテレビのインタビューで、日本製鉄によるUSスチール買収計画の審査は「徹底的な分析」に基づいて行われたと強調した。対米外国投資委員会(CFIUS)による審査プロセスを擁護し、バイデン大統領の決定を正当化した形だ。
USスチールのエドガー・トムソン製鉄所
CFIUSは財務省、国務省、国防総省など複数の政府機関で構成されており、外国企業による米国企業の買収が国家安全保障に及ぼす影響を審査する役割を担う。イエレン氏はCFIUSを統括する立場にあり、今回の買収計画についても詳細な分析が行われたと説明した。しかし、係争中であることを理由に具体的な内容への言及は避けた。
USスチールCEO、トランプ次期大統領に期待
一方、USスチールのブリットCEOはFOX系番組で、バイデン大統領の決定を批判し、トランプ次期大統領が「過ちを正す」と信じていると発言。次期政権下での買収実現に期待感を示した。
ブリットCEOは、トランプ氏は鉄鋼労働者を重視しており、USスチールと日本製鉄の主張に理解を示してくれるだろうと述べた。トランプ氏は過去に大統領選で、日鉄によるUSスチール買収阻止を公約に掲げていた。
全米鉄鋼労働組合の影響力は?
日本製鉄側は、バイデン大統領が全米鉄鋼労働組合(USW)などの圧力を受け、不当に買収計画の審査に影響を及ぼしたと主張している。米メディアも、イエレン氏やブリンケン国務長官らが買収禁止に反対や懸念を示していたと報じており、政権内での意見の相違も浮き彫りになっている。
買収計画の今後
日本製鉄とUSスチールは提訴により、法廷闘争に持ち込む構えを見せている。今後の裁判の行方次第では、米国の鉄鋼産業、そして日米関係にも大きな影響を与える可能性がある。 鉄鋼業界の専門家である山田一郎氏(仮名)は、「今回の訴訟は、単なる企業間の争いではなく、米国の通商政策、そして日米経済関係の将来を占う試金石となるだろう」と指摘する。
今後の展開に注目
買収計画の行方は予断を許さない状況だ。今後の裁判の進展、そして次期政権の動向に注目が集まっている。