中国の軍事力増強は世界的な関心事ですが、その実態は?米国防総省が発表した「中国軍事力評価報告書2024」は、中国軍の意外な弱点に焦点を当てています。本記事では、報告書の要点と専門家の見解を交え、中国軍事力の現状に迫ります。
膨大な軍事費投入の裏側:指揮官の資質不足という深刻な問題
報告書は、中国軍が海・空軍力、ミサイル、核兵器などに巨額の予算を投じていることを改めて指摘しています。しかし、同時に深刻な汚職問題や指揮官の資質不足といった組織的な脆弱性も浮き彫りにしています。
alt(中国軍事力増強のイメージ図:朝鮮日報日本語版より)
これらの問題の深刻さは、有事の際にミサイル発射能力さえ危ぶまれるほどだと報告書は示唆しています。こうした状況が、習近平国家主席による軍部粛清の背景にあると分析されています。国防次官補(インド太平洋安全保障担当)のラトナー氏は、中国による台湾侵攻の可能性について「差し迫った事態ではない」と述べ、中国軍の現状における準備不足を強調しました。
装備は最新鋭でも…「5つの不能」が露呈する中国軍の弱点
報告書は、中国軍の軍事力について「様々な進展は認められるものの、指揮官の熟練度、長距離補給、市街戦といった分野に大きな課題を抱えている」と総括しています。つまり、装備の近代化は進んでいる一方で、運用する「人」と「システム」に深刻な欠陥があるというのです。
報告書作成に関わったラトナー国防次官補とチェイス国防副次官補(中国・台湾・モンゴル担当)は、戦略国際問題研究所(CSIS)の座談会で、報告書の要点について解説しました。特に注目すべきは、チェイス副次官補が言及した「五個不会(5つの不能、Five Incapables)」というキーワードです。
これは、習近平主席が2015年に中国軍の問題点を指摘した際に用いた言葉で、指揮官が作戦現場で
- 状況判断ができない
- 上層部の意図を理解できない
- 意思決定ができない
- 兵力の適切な配置ができない
- 突発的な事態に対応できない
という5つの深刻な問題を指しています。
実戦経験の不足が招く「5つの不能」
チェイス副次官補は、中国軍の公式メディアが未だに「五個不会」というスローガンを使用していることについて、「この問題が未解決であることを意味する」と指摘。1979年の中越戦争以来、実戦経験が皆無であることが、これらの問題の根底にあると分析しています。防衛戦略コンサルタントの田中氏は、「最新鋭の装備を導入しても、それを使いこなす人材育成がおろそかになっている可能性が高い。中国軍の真の戦力は、公式発表の数値だけでは測れない」と警鐘を鳴らしています。
結論:中国軍事力の真価は未知数
中国は軍事力の増強を続けていますが、米国防総省の報告書は、その背後に深刻な問題が潜んでいることを明らかにしました。華々しい軍事パレードや最新鋭兵器の発表とは裏腹に、指揮官の資質や組織運営に大きな課題を抱えている中国軍。今後の動向に目が離せません。