エアインディア機墜落:燃料供給遮断が判明、残る「どうやって?」の謎

ここ10年で最悪の航空事故の一つとなったエアインディア旅客機の墜落事故に関する公式報告書が発表され、一つの重要な問いに答えを出したものの、さらなる疑問が浮上しています。この事故は、インド西部アーメダバードの人口密集地域で発生し、搭乗していた242人のうち1人を除く全員と、地上の19人が犠牲となりました。日本ニュース24時間では、この国際的な社会ニュースの詳細と、安全への示唆を深く掘り下げます。

インド航空事故調査局(AAIB)による暫定報告書では、機体が上昇する離陸直後の数分間に、エンジン2基への燃料供給が遮断されていたことが明らかになりました。フライトレコーダーの記録によると、旅客機が対気速度約333キロに達した時点で、エンジン2基の燃料制御スイッチが「RUN(運転)からCUTOFF(遮断)の位置へ相次ぎ切り替えられた」ことが示されています。この二つのスイッチはわずか1秒以内の間隔で操作され、結果として燃料の流れが遮断されました。

ブラックボックスの音声記録には、操縦士の一人がもう一人に対し、なぜスイッチを切ったのかと尋ねる声が記録されています。尋ねられた操縦士は、自身は操作していないと答えています。報告書はこの会話におけるそれぞれの操縦士の役割(機長か副操縦士か)については明記していません。数秒後、ボーイング787型機の燃料スイッチは元の位置に戻され、燃料供給が再開されました。エンジン2基は再点火に成功し、うち1基は回復に向かい始めたものの、機体の急降下を食い止めるにはすでに遅すぎた、と報告書は結論付けています。暫定報告書は墜落の直接的な原因は特定したものの、なぜ燃料供給が遮断されたのかという根本的な謎は残されたままです。

未だ不明な燃料スイッチ切り替えの経緯

今回の調査結果で判明したのは、燃料スイッチが飛行中にCUTOFFの位置へ切り替えられたという事実です。しかし、これが故意によるものか、偶然によるものか、あるいは技術的な不具合が関与していたのかは、報告書では明らかにされていません。

ボーイング787「ドリームライナー」の燃料制御スイッチは、操縦士2人の席の間、スロットルレバーのすぐ後ろに配置されています。両側面は金属で保護されており、スイッチは誤って動かすことがないよう、操作者が物理的にスイッチハンドルを持ち上げ、戻り止めを越えて動かす必要がある設計になっています。

航空事故調査の経験が豊富な専門家、ジェフリー・デル氏は、両方のスイッチが誤って切り替えられた可能性は低いとの見解を示しています。デル氏は、どちらのスイッチも操作には少なくとも2段階のプロセスが必要であり、意図せず行えるような操作ではないと指摘します。離陸直後の重要な段階でパイロットが意図的に両エンジンへの燃料供給を遮断するシナリオは「奇妙」であり、「この世に存在しない」と述べています。デル氏は、機体のフライトデータレコーダーがスイッチ切り替えの経緯を解明する鍵となるはずだと説明する一方で、AAIBが操縦士間の会話全文を公開していないため、現時点での全体像把握は困難だとしています。

インド・アーメダバード近郊の住宅街に墜落したエアインディア機インド・アーメダバード近郊の住宅街に墜落したエアインディア機

元操縦士のエハサン・ハリド氏もまた、報告書の調査結果は燃料スイッチの位置に関する疑問を投げかけるものであり、この点の解明が調査当局の主要な課題であると指摘しています。ハリド氏は、現段階で操縦士に責任を負わせるべきではないと警鐘を鳴らし、AAIBの報告書が断定的に示しているのは、エンジン2基が出力を失ったことが事故の原因であるという点のみだと述べています。さらに、操縦士たちはエンジンの出力が失われたことを認識しており、その原因となる操作を自身で行っていないことも認識していた、と付け加えています。

ボーイング787型機のコックピットにある燃料制御スイッチボーイング787型機のコックピットにある燃料制御スイッチ

最終報告書の公表は数カ月先になる予定であり、インドのナイドゥ民間航空相は現段階での結論への飛躍を避けるよう呼びかけています。

エアインディア機は6月12日、英ロンドンのガトウィック空港へ向かうため、インド西部グジャラート州の国際空港を離陸しました。エアインディアによれば、搭乗していたのは乗客乗員242人で、内訳はインド国籍169人、英国籍53人、ポルトガル国籍7人、カナダ国籍1人が含まれていました。この悲劇的な事故の全容解明に向けた調査は現在も続いています。

参照:
https://news.yahoo.co.jp/articles/8c47684e7dd99a1d79b86b7b5174cf9a572d7399