沖縄に対する中国の活発な外交アプローチや浸透工作の実態について、近年、懸念が高まっています。特に習近平主席が2022年6月1日に中国と沖縄の「交流」強化を表明して以降、その動きは加速しているようです。今回は、中国政府による「対沖縄工作」の現状と背景、そしてその影響について詳しく解説します。
中国発の沖縄独立プロパガンダ
ネット上での情報工作の実態
近年、「琉球（沖縄）の日本帰属は疑わしい」「琉球人は中華民族であり、中国への復帰を望んでいる」といった主張を含むショート動画が、様々な動画サイトやSNSで拡散されています。これらの動画は主に英語や中国語で作成され、中国国内外に向けて発信されています。日本経済新聞の報道によると、AIツールを用いた解析の結果、約200件の工作アカウントがこれらのデマ動画を拡散していることが判明しました。
沖縄の街並み
学術機関による沖縄研究の政治利用
ネット上での情報工作だけでなく、学術機関もこの動きに加担していることが明らかになっています。香港紙『星島日報』の報道によると、中国遼寧省の大連海事大学に「琉球研究センター」が設立される計画があり、その設立準備シンポジウムでは、中国海洋法学会会長の高之国氏や北京大学教授の徐勇氏といった学界の重鎮から、沖縄の帰属問題に関する過激な発言が相次ぎました。高之国氏は過去に中国の南シナ海領有の根拠となる「九段線」を歴史的な国境と主張してきた人物であり、徐勇氏も沖縄の日本帰属に疑義を唱えてきた歴史研究者として知られています。
高之国氏
これらの動きは、中国政府が沖縄問題を外交戦略の一環として利用している可能性を示唆しています。沖縄出身で、現在は日本に帰化し中城村議選に挑戦中の張世險峰氏（55歳）は、「中国の外交戦略の一種」と指摘しています。
中国の沖縄工作の背景と狙い
中国と西側諸国の対立激化
2010年代後半以降、中国と西側諸国の対立が激化する中で、日本は新疆ウイグル自治区や香港の人権状況を批判し、アメリカと連携して台湾有事への備えを強化してきました。こうした日本の姿勢に対する中国の反発が、沖縄工作の背景にあるとみられています。
沖縄の historical context
沖縄は前近代まで琉球王国として独立した歴史を持ち、現在も沖縄戦の記憶や米軍基地問題など、本土とは異なる歴史的・社会的な背景を抱えています。中国はこうした沖縄の特殊な状況につけ込み、日本政府との摩擦を深めようとしていると考えられます。
台湾問題への対抗措置
中国は、日本が台湾問題に介入することに強い不快感を抱いており、沖縄工作は日本への対抗措置としての側面も持っています。『星島日報』の見出しに「目には目を、日本を牽制せよ」という挑発的な言葉が使われていることからも、その意図が読み取れます。
まとめ
中国による沖縄工作は、ネット上でのプロパガンダや学術機関による研究活動など、多岐にわたる方法で行われています。その背景には、中国と西側諸国の対立激化や、沖縄の歴史的・社会的な特殊性、そして台湾問題への対抗措置といった複雑な要因が絡み合っています。今後の中国の動きを注視していく必要があります。
