桐生市、生活保護費分割支給問題:受給者の窮状と制度の課題

桐生市で発覚した生活保護費の分割支給問題。受給者の生活実態、そしてこの問題が浮き彫りにする生活保護制度の課題について深く掘り下げていきます。

生活保護費分割支給の現状:桐生市の事例

群馬県桐生市では、生活保護費を月額一括ではなく、日割りで分割支給する事例が明らかになりました。市側はパチンコや酒などの遊興費への支出を抑えるためと説明していますが、この措置は受給者にとって大きな負担となっている現状があります。

桐生市役所桐生市役所

60代男性受給者の苦悩

持病を抱え就労困難な60代男性のケースでは、生活保護費が週7000円ずつ振り込まれ、本来受給できる金額の半分ほどしか受け取れていませんでした。食費や光熱費を削る生活を強いられ、物価高騰の折には更に厳しい状況に追い込まれました。

群馬県桐生市群馬県桐生市

男性は市職員の指示でNPO法人と金銭管理の委託契約を結ぶことになり、キャッシュカードや通帳、印鑑を預けることになりました。しかし、男性自身は金銭管理に問題を感じておらず、ギャンブルなどの浪費癖もありませんでした。

生活保護受給者の60代男性へのインタビュー生活保護受給者の60代男性へのインタビュー

この状況について、生活保護問題に詳しい専門家(仮名:山田一郎氏)は、「受給者の生活実態を十分に把握せずに金銭管理を委託させることは、個々の事情を無視した画一的な対応であり、問題がある」と指摘しています。

分割支給の是非:憲法違反との声も

生活保護法は、健康で文化的な最低限度の生活を保障する権利を定めています。しかし、桐生市の分割支給は、この権利を侵害する可能性が指摘されています。

自己決定権の侵害

有識者や支援団体からは、分割支給は受給者の自己決定権を侵害する憲法違反にあたるという批判の声が上がっています。生活保護費の使い道を制限することは、受給者の尊厳を傷つける行為になりかねません。

2013年の生活保護法改正の影響

2013年の生活保護法改正では、不正受給対策が強化されました。桐生市の事例も、この改正の影響を受けている可能性があります。しかし、不正受給防止を重視するあまり、本当に支援を必要とする人々の生活が脅かされる事態は避けなければなりません。

今後の展望:生活保護制度のあり方

桐生市の事例は、生活保護制度のあり方を改めて問うものです。

個別支援の必要性

生活保護受給者には様々な背景を持つ人々がいます。そのため、画一的な対応ではなく、個々の事情に合わせたきめ細やかな支援が不可欠です。

受給者支援の充実

生活保護受給者が自立に向けて歩めるよう、就労支援や生活指導など、多角的な支援策を充実させる必要があります。

桐生市の事例を教訓として、生活保護制度の改善に向けた議論を深めていくことが重要です。