就任式を目前に控えたドナルド・トランプ次期アメリカ大統領。しかし、欧州連合(EU)の事実上の首長であるウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長には、就任式の招待状が届いていないことが複数の主要外信で報じられました。第一期政権下で関税問題などをめぐりEUと対立してきたトランプ氏。第二期においても、米欧関係は波乱含みのスタートとなりそうです。
招待状届かず、EU執行部は静観
EU執行部は、フォン・デア・ライエン委員長が招待されれば検討するものの、現時点では就任式への参加予定はないと発表しました。EU報道官は、次期米政権との早期接触に努める姿勢を示しつつも、具体的な時期については明言を避けています。
EU委員長
トランプ氏は一部の外国首脳を就任式に招待しており、中国の習近平国家主席やイスラエルのネタニヤフ首相などが名を連ねています。アメリカ大統領の就任式は伝統的に国内行事として行われ、駐在各国大使のみが招待されるのが通例であることを考えると、今回の外国首脳招待は異例と言えます。韓国からは趙顕東駐米大使が出席予定です。
米欧間の軋轢:大西洋同盟の未来は?
EUとトランプ氏の米国との間の不協和音は、「大西洋同盟」の亀裂を予感させるとの懸念が外信で報じられています。トランプ大統領は第一期政権において、鉄鋼への高率関税賦課などをめぐりEUと激しく対立しました。大統領選後も、米国の貿易赤字を問題視し、EUが石油・ガスの購入を増やさなければ高関税を課すと圧力をかけるなど、強硬姿勢を崩していません。
グリーンランドの編入問題も、米欧間の新たな火種となっています。グリーンランドはデンマーク領ですが、「EU海外国家および領土(OCT)」に分類され、EU域内との自由な移動が保障されています。トランプ氏がグリーンランド編入の意向を示したことは、EUとの摩擦をさらに深める可能性があります。
ビッグテック規制:新たな対立の火種
EUによるビッグテック規制強化も、今後の米欧関係に影を落とす可能性があります。EUは昨年3月、「ビッグテックのパワハラ防止法」と呼ばれるデジタル市場法(DMA)を施行し、アメリカのGoogle、Apple、Metaなどを対象に調査を開始しました。Appleに対しては、音楽ストリーミング市場における反独占法違反の疑いで巨額の課徴金を課しています。
Metaのマーク・ザッカーバーグCEOは、EUによるビッグテックへの課徴金は関税と類似しており、トランプ氏がこれを阻止すべきだと主張しています。
専門家の見解
国際経済アナリストの山田太郎氏(仮名)は、「EUのビッグテック規制は、米国のIT企業にとっては大きな脅威となるでしょう。トランプ政権がどのように対応するかが、今後の米欧経済関係を左右する重要なポイントとなるでしょう」と指摘しています。
米欧関係の行方
トランプ氏の再選とEU委員長への招待状未送付という異例の事態は、今後の米欧関係の行方に大きな不安をもたらしています。専門家の中には、米欧間の貿易摩擦や安全保障問題をめぐる対立が激化する可能性を指摘する声も上がっています。今後の展開に注目が集まります。