習近平氏の権力に異変か:長老・軍部連合が牽制強化、側近人事にも影響

中国で習近平国家主席の強力な権威に変化の兆しが見え始めています。執権以来、盤石と見られてきた習氏の独裁体制が、長老勢力と軍部との連合による牽制を受け、次期指導部を巡る動きが活発化しているとの分析が浮上しています。最近の共産党の動きは、こうした見方を裏付けるかのようです。

習近平氏、中国の政治情勢と長老勢力による牽制習近平氏、中国の政治情勢と長老勢力による牽制

長老勢力、政治介入を制度化

実際に最近、中国共産党は習氏の独断を防ぐため、長老の政治介入を公開的に制度化しました。6月30日、国営新華通信は2カ月ぶりの政治局会議を伝え、「党中央の『政策決定議事協調機構』を設立した」と公表。この機構は「重要な業務をトップレベルで設計し、総体的に協調・推進して、実行を監督および督促する」高い地位を持ち、「重大な業務(大事)」を企画・議論・推進し、「統括は代行せず、到達は越権せず」を徹底する、と報じられました。事実上、国政を総括する権限が付与されたことを示唆しています。

新機構は「習家軍」への牽制か

この報道は大きな波紋を広げました。香港の「灼見名家」は、この機構が「長老が直接政治に参加する空間を用意したもの」であり、1982年の鄧小平が作った党顧問委員会に似るが、法的により強力な権限が付与されていると解説。北京のある分析家は、「習近平派一色の現中央政治局7人制常務委員会を牽制する装置」であり、長老が常務委員会会議に招集・出席・発言できると明文化したものだと見ています。

側近「習家軍」の要職排除と人事異動

これらの報道に続き、習氏側近グループとされる「習家軍」の要職からの排除と、派閥色の薄い人々の台頭が顕著です。習氏夫人の同郷、馬興瑞政治局員(新疆ウイグル自治区党書記)は7月1日に待機発令。4月には、習氏の母校出身の李幹傑中央組織部長が、長老・曽慶紅元副主席と関係深い石泰峰統一戦線部長に交代。これは長老勢力の人事権掌握を示す出来事です。石氏と連携した陳小江統一戦線部副部長も新疆ウイグル自治区党書記に栄転。これらの人事は「習家軍」の退潮を加速させる可能性があり、台湾メディアは馬氏排除や李氏降格の可能性を報じています。

これらの動きは、習近平氏の絶対的な権力に陰りが見え始め、党内の力学に重要な変化が生じていることを示唆しています。特に、長老勢力と軍部が再び政治的な影響力を強めていることは、今後の中国政治の展開を注視する必要があることを示唆しています。