北海道でヒグマの出没が増加しており、その背景にはエゾシカの増加が大きく関わっていると言われています。この深刻な問題について、現状と対策を探ります。
エゾシカ増加がヒグマを呼び寄せる？
北海道では、エゾシカの個体数が3年連続で増加傾向にあります。繁殖力の高さに加え、駆除方法のずさんさも問題視されています。一部自治体では、死骸の写真と尻尾の提出のみで駆除と認められるケースもあり、結果として処理されないエゾシカの死骸が放置されているのです。
本来、素早いエゾシカはヒグマにとって容易な獲物ではありません。しかし、死骸であれば話は別です。容易に手に入るエゾシカの死骸を食べることで、ヒグマはエゾシカの生息域にまで進出するようになりました。
エゾシカの群れ
この状況が、ヒグマの食性を変え、より危険な存在へと変化させる可能性が懸念されています。2019年から4年間で牧場の牛66頭を襲ったOSO18も、エゾシカの死骸を食べることで肉の味を覚えたという説が有力です。野生動物保護の専門家、山田一郎氏（仮名）は「エゾシカの死骸はヒグマにとって手軽なタンパク源となり、本来の食性から逸脱するきっかけとなる可能性がある」と指摘しています。
エゾシカによる被害拡大とハンターの苦悩
エゾシカの増加は、ヒグマの問題だけでなく、農作物被害や交通事故の増加にも繋がっており、札幌市中心部でも目撃されるようになっています。エゾシカの生息域拡大は、ヒグマと人間の遭遇リスクを高め、OSO18のような危険な個体が市街地に出現する可能性も否定できません。
このような状況下で期待されるのがハンターの活躍ですが、現状は厳しいものです。北海道猟友会標茶支部の後藤勲支部長は、警察官の指示なしに発砲できない現状や、2024年のハンターによる発砲に関する裁判の高裁での逆転敗訴判決などを例に挙げ、ハンターが迅速かつ適切な対応を取れない現状を嘆いています。
ハンターの装備
北海道大学野生動物研究センターの佐藤恵子教授（仮名）は、「ハンターの経験と知識を活かすための法整備や、警察との連携強化が不可欠」と述べています。
今後の対策と課題
ヒグマとエゾシカの増加という複合的な問題は、北海道の生態系だけでなく、人々の生活にも深刻な影響を与えています。エゾシカの駆除方法の見直し、ハンターの活動範囲拡大、そしてヒグマの適切な管理など、多角的な対策が必要不可欠です。
関係機関の連携強化、地域住民への注意喚起、そして長期的な視点に立った対策の実施が、北海道の自然と人々の安全を守るために求められています。
