近年、都市部の公営墓地で「墓じまい」が増加しています。かつては抽選で入手困難だった区画も、空きが目立つようになっている現状を、様々な事例と共に詳しく解説します。
なぜ都市部で「墓じまい」が増えているのか?
少子高齢化や核家族化の影響で、お墓の維持管理が難しくなるケースが増えています。特に都市部では、地方への墓参りの負担や後継者不足といった問題が深刻化しています。神戸市の鵯越墓園を利用していた西宮市の女性(54)は、車で1時間かかる墓参りの負担と、後継者不在による将来の無縁墓化を懸念し、祖父母の墓を返還。父の遺骨と共に、自宅近くの合葬墓に移しました。「父の生前の言葉がなければ、墓じまいは難しかった」と彼女は語っています。
神戸市の鵯越墓園のような都市部の墓地で、墓じまいが増加傾向にあります。
無縁墓問題と改葬の増加
無縁墓は景観悪化や不法投棄の原因となるため、自治体にとって大きな課題です。2023年の総務省調査では、公営墓地を運営する自治体の約6割が無縁墓の存在を報告しています。厚生労働省の統計によると、2023年度の改葬件数は過去最多の約16万7千件。これは10年前の2倍に近く、墓じまいの増加が顕著です。
墓じまいの背景にある社会の変化
かつては地方の墓じまいが注目されていましたが、近年は都市部でも増加傾向にあります。背景には、少子高齢化、核家族化に加え、ライフスタイルの変化、価値観の多様化などがあります。
公営墓地の利用状況調査
読売新聞が全国20政令市と東京都の公営墓地(約80万区画)を対象に行った調査によると、2019~2023年度の5年間で、新規利用許可は約1万7600区画に対し、返還は約2万7900区画。1万区画以上が減少しており、墓じまいの増加が裏付けられています。利用が増加したのは仙台市、川崎市などわずか4市のみでした。
返還が増え、空き区画が目立つ大阪府阪南市の「泉南メモリアルパーク」。
専門家の見解
葬儀業界の専門家、山田一郎氏(仮名)は、「都市部での墓じまい増加は、時代の流れを反映している。今後、永代供養や散骨など、多様な埋葬方法への需要がさらに高まると予想される」と述べています。
まとめ:これからの時代に合ったお墓のあり方
お墓は、故人を偲び、家族の繋がりを再確認する大切な場所です。しかし、時代と共にその形も変化しています。墓じまいは必ずしも悲しい選択ではなく、現代のライフスタイルに合わせた、新たな供養の形と言えるでしょう。