先日、日本製鉄によるUSスチールの買収をアメリカのジョー・バイデン大統領が阻止したことを受けて、日本製鉄の会長がバイデン大統領を「バイデン」と呼び捨てにするという出来事がありました。
こう書くと「あれ? アメリカではそもそも人の名前は呼び捨てなのでは?」と思う人もいるかと思います。確かにファーストネーム、日本式に言うと「下の名前」、私の場合ならデビッド、は呼び捨てではあるものの、親しみのこもったごく一般的なものです。
しかし、実は苗字の呼び捨てというのは滅多に見られず、それは一国の大統領に対し失礼ではないか、いや、失礼を承知で呼び捨てにするくらい怒り心頭に発していたのだろう、などさまざまなコメントがネット上に飛び交いました。
■アメリカでは「苗字呼び捨て」は失礼
まず、アメリカの伝統的な価値観から言いますと、顔を合わせて同じ時間を共有する関係であれば年齢や立場に関係なく下の名前の呼び捨てはOKです。私の場合ならデビッドでまったく問題ありません。生活している中で9割以上はこの呼び方で問題ないでしょう。
これはかなり立場に違いがあっても通用する常識で、たとえば私がバイデン大統領と1回でもゴルフを一緒に回ったとすれば、以降私は互いにジョー、デビッドと呼びあうでしょう。そういえば日本の首相とアメリカ大統領でそんな関係性をアピールしていた人がいましたね。
しかし、そこまでの関係でなければ基本は「President Biden(プレジデントバイデン)」、日本風にいうと「バイデン大統領」と呼びます。これはTVニュースのアナウンサーの動画をみていただければ、必ずそう呼んでいることが確認できます。
ちなみに同じプレジデントでも会社社長に対し「プレジデントベネット」と呼んでいるケースはみたことがありません。
この場合は皆さんが中学校で習った通り「ミスターベネット」です。社長に限らず、ビジネスにおいてはたとえ相手が年下であっても、初対面、かつ気を使うべき相手ならまずは「ミスター**」と呼びます。ほかにはホテルや、格式のあるレストランなどでは接客係は相手を必ずミスターをつけて呼んでいます。
ちなみに、日本人の名前が欧米式とは姓名の順が逆であることを知らずに、苗字をファーストネームと思って敬称なしで呼んでしまうアメリカ人が時々います。しかし、それが苗字だと知った時は真っ青になって謝ります。