韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の逮捕に先立ち、ソウル市内の大統領公邸周辺には15日明け方から、尹氏の逮捕を求める市民と、逮捕に反対する市民双方が集結。尹氏が逮捕されると、逮捕を求めてきた市民側からは「一緒に闘ってくれてありがとう」などと捜査当局を称賛する歓声が起きた。
午前10時半すぎ、公邸の門から捜査当局の黒い車両が連なって出てきた。尹氏が逮捕されたとの報道が集会場所の大型スクリーンに流れると、逮捕を求めてきた市民は「我々が勝った!」と叫び、ハグや握手をして喜びを分かち合った。
午前2時ごろから待機していたという尹智恵(ユンジヘ)さん(40)は、尹氏について「捜査を受けるべきなのに拒否し、ここまでの公権力を動員した。全く責任感がない」と批判。「法と常識のある社会に進むための一歩を踏み出せてとてもうれしい。社会や経済の課題が山積しているが、国民のエネルギーでうまく解決できると信じている」と述べた。
また、会社員の安鎮姫(アンジンヒ)さん(26)は「最後まで人前に姿を見せなかったのは少し腹立たしいが、逮捕されて良かった。弾劾審判にもちゃんと出席してほしい」と声を震わせた。
一方、尹氏の支持者も公邸付近に集結。逮捕直後、大型スクリーンに尹氏が国民に向け肉声で語るメッセージ動画が流れると、静かに聴き入った。李壬炯(イイムヒョン)さん(76)は、保守の地盤である南東部・大邱(テグ)から駆けつけたといい「違法な逮捕だ。必ず正義が勝利する」と述べた。
3日に捜査当局が逮捕状執行を試みた際は、大統領警護庁要員らが逮捕を阻んだ。この日、尹氏の支持者からは「警護庁頑張れ! 高捜庁(高官犯罪捜査庁)は出ていけ!」とのコールも起きていた。
尹氏を逮捕した高捜庁の庁舎は、ソウル郊外の京畿道果川市にある。尹氏の代理人の弁護士が「尹大統領が出頭する」と表明すると、庁舎入り口はカメラマンであふれ返った。
だが尹氏を乗せた車両は裏門へ回った。一部の韓国メディアが横顔をとらえたものの、正面から撮影できたメディアは無かった模様だ。高捜庁が現職大統領である尹氏に配慮したとみられる。その後、高捜庁の正門付近にも尹氏の支持者が集結し「不正逮捕だ!」などと抗議の声をあげた。【ソウル日下部元美、果川(韓国北西部)福岡静哉】