2023年に池田大作名誉会長が死去して以来、創価学会と公明党の将来に注目が集まっています。一代で巨大な組織を築き上げた池田氏のカリスマ性はどこから来たのか、そして彼のリーダーシップが現在の「後継者不在」という構造をどのように生み出したのか。「宗教問題」編集長の小川寛大氏がその功罪を分析します。この記事では、池田氏の類まれな「現場力」と、彼が抱えていた「学歴コンプレックス」が組織に与えた影響に焦点を当て、創価学会・公明党が直面する課題を深掘りします。
池田大作のカリスマ性の源泉:「現場力」
池田氏のカリスマ性の核心は、その「現場力」にありました。彼は決して神秘的な能力に頼るのではなく、末端の会員一人ひとりと直接触れ合うことを重視しました。多くの会員が「実際に手を握ってくれた」「年寄りだと気遣って背負ってくれた」といった個人的な経験を語っており、これが池田氏への強い信頼と求心力を生み出しました。
選挙の際には全国を精力的に飛び回り、幹部に対しても「先生は奥の院にいるのではなく、常に現場に出てくる」という緊張感を与え、組織全体に活気と結束をもたらしました。この直接的な関わりこそが、池田氏を他の宗教家とは一線を画す存在としたのです。
創価学会名誉会長の池田大作氏
日蓮正宗との対立と激しい内紛
しかし、池田氏の晩年に近づく1990年代に入ると、組織は大きな試練に直面します。池田氏の人生最後の巨大な敵となった日蓮正宗との対立が激化し、最終的に破門されるという事態に至りました。この「かつての身内と戦う」という状況は、組織内部にも激しい波紋を広げました。
小川氏は、竹入義勝氏や矢野絢也氏といった主要な幹部が「仏敵」として排斥され、彼らが暴露本などで反撃するという、かつてない内紛が繰り広げられたことを指摘します。この時期の混乱は、組織の結束に大きな影を落としました。
学歴コンプレックスがもたらした後継者不在
池田氏のカリスマ性と並行して、その「学歴コンプレックス」が後継者問題の根本原因であると小川氏は分析しています。池田氏自身は高学歴ではなかったため、その裏返しとして、側近には東京大学卒などの高学歴な人材を好んで配置する傾向がありました。
現在の創価学会・公明党の指導層を見ると、その傾向は明らかです。創価学会現会長の原田稔氏や主任副会長の谷川佳樹氏は東大出身、公明党代表の斉藤鉄夫氏は東工大出身、さらにはゴールドマン・サックス出身の岡本三成議員など、エリートが多数を占めています。小川氏は、池田氏が叩き上げのリーダーであったにもかかわらず、「周りに配置したのは育ちが良すぎるエリートばかりだった」と指摘します。
この人選の結果、組織内には「池田さんと同じスタイルで後継者になれる人は誰もいない」という状況が生まれました。現在のエリート層は優秀であるものの、池田氏のようなカリスマ性を発揮できるタイプではないとされています。
巨大な功績と残された課題
叩き上げのカリスマが、皮肉にも自身のコンプレックスによってエリートを重用し、結果として自分と同じタイプの後継者を育むことができなかった。池田大作という巨大な存在が残した功績と、その後継者不在という課題は、彼の複雑なレガシーとして現在の創価学会・公明党に深く刻み込まれています。組織が今後どのようにこの課題を乗り越え、新しい時代を築いていくのか、その動向が注目されます。
参考文献:
- Yahoo!ニュース: 池田大作名誉会長が2023年に死去してから、創価学会・公明党はどんな団体になっているのか?
https://news.yahoo.co.jp/articles/491ad606dcd6e298a7deb8ce39e954636bcbe9df




