働き方改革と年収の壁:106万円の壁撤廃でどうなる?

「103万円の壁」に続き、注目を集めているのが「106万円の壁」。これは税金ではなく、社会保険における壁です。本記事では、106万円の壁撤廃の背景、メリット・デメリット、そして私たちの働き方への影響について分かりやすく解説します。

106万円の壁とは?配偶者控除と社会保険料の関係

現在、会社員などの扶養に入っている配偶者は「第3号被保険者」と呼ばれ、社会保険料を支払わずに国民年金を受け取ることができます。しかし、従業員51人以上の企業で週20時間以上働き、月収約8.8万円(年収約106万円)を超えると、この扶養から外れ、自身で厚生年金や健康保険料を負担しなければなりません。これが「106万円の壁」です。

第3号被保険者のイメージ第3号被保険者のイメージ

106万円の壁撤廃:政府の狙いと私たちの未来

政府は、この106万円の壁を撤廃し、「週20時間以上働く人は原則として厚生年金に加入」というルールに変更しようとしています。目的は、年金財政の持続可能性の確保です。

みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介チーフ日本経済エコノミストは、「現在約686万人いる第3号被保険者を縮小したいというのが政府の考え」と指摘しています。106万円の壁撤廃により、約200万人が新たに厚生年金に加入すると見込まれています。例えば、年収117万円で20年間厚生年金に加入した場合、老後の年金受給額は国民年金と合わせて年間約92万円となり、国民年金のみの場合と比べて年間約12万円増加します。

メリットとデメリット:将来への安心か、今の手取りか

106万円の壁撤廃は、老後の年金増加というメリットがある一方で、手取り収入が減少するというデメリットも存在します。将来の不安軽減と現在の生活への影響、どちらを優先するかは個々の状況によって異なります。

フリーランスで働く都内在住の52歳女性は、「将来何歳まで生きるのか分からないので、老後にもらえるお金を増やすより、今手取りが減るのは避けたい」と話しています。

働き方改革への影響:多様な働き方の実現に向けて

106万円の壁撤廃は、働き方改革の一環として、より柔軟な働き方を促進する狙いもあります。パートタイムで働く人々が社会保険に加入しやすくなることで、安心して長く働き続けられる環境が整備されることが期待されています。

私たちの選択:未来を見据えた働き方を

106万円の壁撤廃は、私たちの働き方や将来設計に大きな影響を与える可能性があります。自身の状況や価値観に合わせて、最適な選択をすることが重要です。