新卒3年以内離職率が過去最高34.9%に:Z世代の退職傾向と企業が知るべき視点

近年、若手社員、特にZ世代の早期離職が企業にとって深刻な課題となっています。採用してもすぐに辞めてしまう若者たちを見て、「会社に問題があるのか」「自分たちの育て方が悪いのか」と悩む声が聞かれます。本稿では、Z世代の行動を研究する経営学者の視点も交えながら、早期離職の現状と背景、そして世代間の認識ギャップについて深く掘り下げていきます。

「七五三現象」から見る若年層離職の歴史的背景

若者の離職自体は、決して新しい現象ではありません。かつては、中卒で約7割、高卒で約5割、大卒で約3割が離職する「七五三現象」という言葉が定着していました。2000年前後の研究では、不況期に入社した社員の勤続期間が、バブル期入社組に比べて有意に短いことや、卒業時の景気が就業率に長期的な影響を与えることが指摘されてきました。

また、日本の雇用システムの変化も早期離職を後押ししています。特に1990年代後半以降、終身雇用制度の形骸化や年功賃金のフラット化が進んだことで、同じ会社に留まり続けるインセンティブが低下しました。これは、若者たちがキャリア形成において、企業への帰属意識よりも個人の成長や市場価値を重視するようになったことと無関係ではありません。

記録更新!新卒3年以内離職率34.9%が示す現状

直近のデータは、この流れをより明確に示しています。2021年に新卒で入社し、3年以内に離職した人の割合は、なんと34.9%を記録しました。これは過去15年間で最高の値であり、主要な報道番組でも大きく取り上げられ、社会的な関心を集めています。

このニュースに対する世代間のコメントは、興味深い認識ギャップを浮き彫りにしました。25歳の営業職の若者は「妥当かな。驚きはないです。踏ん切りつけるなら早い方がいいと思うので」と、転職に肯定的な姿勢を見せる一方、60代の会社員からは「私は昭和世代の人間ですから、仕事命、家庭のためという考えで仕事はやってきた。(若い人は)考え方が甘いと思うんですよ。高校生ぐらいの感覚で世間に出られているのかなと」という厳しい意見も聞かれました。

職場で早期離職について考え込む若手社員の姿職場で早期離職について考え込む若手社員の姿

報道機関の多くも、「世代間ギャップ」や若者が「成長実感」を求める傾向に着目しています。大手企業から小規模企業まで、企業規模を問わず早期離職の問題が顕在化している統計は、若者の転職志向がますます高まっているという印象を与え、結果として多くの企業や上司の「離職不安」を増大させているのが現状です。

変化する労働観への理解と適応が鍵

Z世代の早期離職率が過去最高を更新している背景には、単なる「甘さ」や「根性のなさ」といった精神論だけでは片付けられない構造的な要因と、明確な世代間ギャップが存在します。彼らが重視するのは、終身雇用よりも自身のスキルアップ、安定よりも「成長実感」やワークライフバランスです。企業は、この変化する若者の労働観を理解し、彼らが働き続けたいと思えるような職場環境やキャリアパスを提供することが求められています。画一的な評価基準や旧態依然とした働き方を見直し、多様な価値観を受け入れる柔軟な組織へと変革していくことが、今後の人材確保と定着の鍵となるでしょう。


参考文献

  • 舟津昌平. (未発表). 『若者恐怖症――職場のあらたな病理』祥伝社. (※本稿は一部再編集)
  • 日テレNEWS. (2024年10月). 若者の離職率、3年以内で「34.9%」―15年で最高に 「甘い」「根性だけでは」…世代間ギャップも“成長実感”求める?.
  • PRESIDENT Online. (参照日: 2024年X月X日). 早期退職は増えている?. (図表への言及)