韓国では、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の非常戒厳令発令と逮捕をきっかけに政治不安が高まり、外国人投資家の資金流出が加速しています。本記事では、韓国経済の現状と今後の見通しについて詳しく解説します。
外国人投資家の動向:コロナ禍以降最大の資金流出
韓国銀行(中央銀行)の発表によると、2024年12月の外国人投資家の証券投資資金は、38億6000万ドル(約6015億円)もの純流出となりました。これは、コロナ禍に見舞われた2020年3月以来の最大規模です。
韓国の金融街
株式市場においても、外国人投資家は25億8000万ドル(約4019億円)の資金を引き揚げ、5ヶ月連続の流出となりました。半導体産業の先行きへの懸念に加え、政治不安や米国の利下げ遅延観測などが投資家心理を冷やしています。
政治不安定が経済の足かせに:韓国銀行総裁の見解
韓国銀行の李昌勇(イ・チャンヨン)総裁は、今後の韓国経済の鍵は政治の安定化にあると強調しています。従来は米国の金融・貿易政策が最大の変数でしたが、現在は尹大統領をめぐる政情不安が経済に最も大きな影響を与えていると指摘しました。
韓国経済の専門家である朴哲洙(パク・チョルス)氏(仮名)も、「政治の混乱は企業の投資意欲を削ぎ、経済成長を阻害する」と警鐘を鳴らしています。
政策金利据え置き:ウォン安への懸念
韓国銀行は、市場の予想に反して政策金利を3.00%に据え置きました。これは、政治不安によるウォン安を食い止める狙いがあるとされています。
韓国銀行
李総裁は、ウォン安への懸念を示しつつも、金融政策委員の多くが今後の利下げに前向きな姿勢を示していることを明らかにしました。
大統領逮捕:韓国史上初の事態
2025年1月15日、尹大統領は現職大統領として初めて逮捕されました。戒厳令発令を巡る内乱首謀の容疑です。大統領邸宅には3000人以上の捜査員が動員されましたが、逮捕劇は比較的穏便に行われたと報じられています。
この逮捕劇はウォン相場にも影響を与え、一時的にウォン高が進みました。しかし、2024年9月下旬以降のウォン安基調は変わらず、主要新興国通貨と比較しても下落幅が大きい状況です。
航空機墜落事故:経済への更なる打撃
2024年12月29日に発生したチェジュ航空機墜落事故も、韓国経済に暗い影を落としています。179人もの犠牲者を出したこの事故は、国民に大きな衝撃を与え、消費マインドの冷え込みも懸念されています。
今後の見通し:政治の安定化が不可欠
韓国経済は、政治不安、ウォン安、航空機墜落事故など、多くの課題に直面しています。政府は2025年の経済成長率予測を下方修正しましたが、今後の見通しは依然として不透明です。
政治の安定化、経済対策の推進、そして国民の信頼回復が、韓国経済の再建には不可欠と言えるでしょう。