労働力不足が深刻化する中、若手人材はますます貴重な存在となっている。しかしそのような中、若手社員のメンタルヘルス不調による休職・離職が増えているという。近年はストレスチェックや過重労働・ハラスメントへの対策が進み、職場のストレスはむしろ全体として減っているはずだ。一体今、若手社員に何が起きているのだろうか?
【グラフ】批判や失敗を避けがちな若手ほど上司から叱られるとストレスを感じやすい
(金本 麻里:パーソル総合研究所 研究員)
■ 若手社員のメンタルが危ない
止まらない少子化により、全国の20代の人口は年々減少を続ける。企業における2025年卒の新卒採用充足率は過去最低を記録した。転職市場が活況を呈しているため、入社後の定着も重要課題だ。若手人材の「奪い合い」が進んでいる。
しかしそのような中、20代のメンタルヘルス不調による休職・離職が増えているというデータがある。
労務行政研究所が2022年に実施した調査では、6割もの企業が全年代の中で20代のメンタルヘルス不調の増加が最も目立つと回答した*1
。筆者らが2024年8月に実施した「若手従業員のメンタルヘルス不調についての定量調査」でも、20代社員のメンタルヘルス不調(日常生活が困難なレベル)は全世代で最も多く、過去3年で20.6%、5人に1人がなっていた。 (注:本調査におけるメンタルヘルス不調とは、「日常生活が困難になるレベル」であり、以降も同様の意味で使用)
しかし、振り返ってみれば、ここ10年ほどで従業員へのメンタルヘルス対策は、多くの企業で行われるようになってきたはずだ。このような努力もむなしく、若手のメンタルヘルス不調が今「増えている」というのは、企業に限らず社会全体にとって大きな問題ではないだろうか。
では、なぜ20代のメンタルヘルス不調は増えているのだろうか。筆者らはこの問題の原因を探るべく、全国規模の調査を行った。すると、一般的なメンタルヘルス対策では見逃されやすい、若手特有の3つの理由が見えてきた。