更生支援の要である保護司の高齢化と人材不足が深刻化しています。2024年5月に発生した痛ましい事件をきっかけに、その存在と無償ボランティアという実態が改めて注目されました。法務省が設置した検討会では報酬制導入が見送られましたが、今後の保護司制度の持続可能性について、現場の声を交えながら探っていきます。
保護司制度の現状:高齢化と人材不足の深刻な影
新宿御苑近くの全国保護司連盟
全国で約4万7000人が活動する保護司。刑務所や少年院を出所した人たちの更生を地域社会で支える重要な役割を担っています。しかし、近年は高齢化と人材不足が深刻な問題となっています。過去10年間で1000人以上が減少しており、この状況が続けば制度の維持が困難になる可能性も懸念されています。
法務省は2023年5月から「持続可能な保護司制度の確立に向けた検討会」を設置し、人材不足の解消、安全対策、報酬制導入の是非などについて議論を重ねてきました。検討会に参加した豊島区保護司会会長の山元俊一氏(仮名、保護司歴27年)は、人材不足の背景について次のように語ります。
「保護司の約4割が70歳以上で、退任年齢が78歳(一部の職務は80歳)のため、数年後には深刻な人材不足に陥ることが予想されます。地方ではすでにその兆候が現れています。現役世代の確保が急務ですが、従来の人脈頼りの採用方法では限界があります。」
報酬制導入見送り:ボランティア精神と現実の狭間で
保護司活動のイメージ
検討会では、報酬制導入の是非が大きな争点となりました。最終的には、保護司のボランティア精神を尊重し、報酬制は導入しない方針が決定されました。しかし、生活支援や就労支援など、保護司の活動は多岐にわたり、時間的・経済的な負担も少なくありません。
「更生支援には、保護観察対象者との信頼関係構築が不可欠です。そのためには、時間をかけてじっくりと向き合う必要があります。無償での活動は負担が大きく、特に若い世代の参加を阻む要因の一つとなっています。」(山元氏)
報酬制導入には賛否両論がありますが、人材確保の観点からは、検討の余地があると言えるでしょう。例えば、交通費や通信費などの実費支給、研修機会の充実、活動内容に応じたポイント制度の導入などは、ボランティア精神を損なうことなく、活動へのインセンティブを高める効果が期待できます。
今後の展望:更生支援の未来を守るために
保護司制度は、地域社会の安全と更生支援にとって不可欠な存在です。制度の持続可能性を確保するためには、人材不足の解消、安全対策の強化、そして活動への適切な支援が不可欠です。
「保護司の活動は、社会貢献度の高い、やりがいのある仕事です。多くの人に興味を持ってもらい、参加してもらえるよう、広報活動の強化や、活動内容の理解促進が必要です。」(山元氏)
更生支援の未来を守るために、私たち一人ひとりが保護司制度について理解を深め、支えていくことが重要です。