現代社会の闇を鋭く切り取る問題作『ゴールデンドロップ』(原作:津覇圭一、漫画:上月亮、講談社刊)をご存知でしょうか。SNSを中心に大きな話題を呼んでいるこの作品は、自殺願望を持つ若者たちが500億円もの覚醒剤売買に手を染めていく様を描いた衝撃作です。貧困、虐待、家族崩壊…様々な苦境に追い込まれた若者たちが、いかにして禁断の道へ足を踏み入れるのか。本記事では、その背景や作者の想いを探ります。
絶望の淵で出会った「希望」…か?
自殺志願の若者たちが廃寺に集まるシーン
物語は、ハッシュタグ「#自殺」を介して出会った3人の若者が廃寺に集まるシーンから始まります。毒親、いじめ、最愛の人の死、家庭崩壊…それぞれが抱える深い絶望から逃れるため、彼らは自殺を決意します。高校生の大矢、フリーターのアズ、元警察官の十三。人生の終着点で出会った彼らの前に現れたのは、謎の男・伽賀レイジと、廃寺の地下に隠された500億円相当の覚醒剤でした。
「運ぶのとか売るのとか手伝ってくんない?」
レイジから持ちかけられた覚醒剤売買。それは、自殺願望を持つ彼らにとって、思いもよらぬ「選択肢」でした。「どうせ死ぬのなら、僕らを傷つけたこの世界に一矢報いたい。奪われた幸せをほんの少しでも取り返したいんだ」。社会への復讐心、そしてかすかな希望を抱き、4人は「ゴールデンドロップ」と呼ばれる輝かしい転落への道を歩み始めるのです。
闇バイト、覚醒剤…現代社会のリアル
覚醒剤売買に手を染める若者たち
闇バイト、覚醒剤…『ゴールデンドロップ』は、現代社会の闇を容赦なく描き出します。追い詰められた若者たちがなぜ犯罪に手を染めるのか、その心理描写は生々しく、読者の心に深く突き刺さります。
犯罪学の専門家である山田教授(仮名)は、「現代社会の不安定さが若者たちを追い詰め、犯罪に手を染めやすくしている」と指摘します。「経済的な困窮、社会からの孤立、将来への不安…様々な要因が複雑に絡み合い、彼らを絶望の淵へと押しやっているのです。」
作者・津覇圭一の想い:「日常のすぐそばにある闇」を描く
作者・津覇圭一氏のインタビュー風景
原作の津覇圭一氏は、「日常のすぐそばにある闇」を描きたいという強い思いからこの作品を構想したと語ります。身近な人物が犯罪に手を染めてしまうという経験、そしてニュースで報道される事件の数々…「誰でも陥る可能性のある話」だからこそ、リアルに描くことで読者に問題提起したいと考えたのです。
『ゴールデンドロップ』は、単なるエンターテイメント作品ではありません。現代社会の闇、そしてそこに生きる人々の苦悩を描き出すことで、私たちに重要な問いを投げかけているのです。