英国がウクライナへの派兵問題で揺れています。戦闘要員ではなく、ウクライナ兵の訓練や停戦後の平和維持活動への参加が想定されていますが、万が一死傷者が出た場合、英国が本格的な戦争に巻き込まれる懸念が拭いきれません。
スターマー首相、ウクライナ訪問も派兵には言及せず
2025年1月16日、スターマー英首相はウクライナの首都キーウを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談。「英国は100年先までウクライナと共にある」と力強く宣言し、軍事協力に加え、教育や科学技術分野での支援を約束しました。
ゼレンスキー大統領とスターマー首相の会談
しかし、肝心の英軍派遣については明言を避けました。早期停戦を目指すトランプ次期米大統領の意向もあり、停戦後の平和維持部隊派遣案が浮上しているものの、スターマー首相は「同盟国と協力する」と述べるにとどまりました。ゼレンスキー大統領も協議の事実を認めたものの、詳細は「時期尚早」として明かしませんでした。
派兵の難しさ:兵力不足と戦争拡大の懸念
英国の躊躇の背景には、地上戦への巻き込みを懸念する声が上がっていることがあります。元英陸軍幹部は、最悪の場合「英軍全体が戦争に巻き込まれる」と警告しています。
スカイニューズ・テレビによると、現在の英陸軍の正規兵は約7万4000人で、人口比で1800年以降最低水準です。大規模な派兵は現実的に難しく、仮に実行すれば英国の負担は大きくなります。軍事アナリストの田中一郎氏(仮名)は、「英国は既にウクライナへの軍事支援を行っているが、派兵は更なるリスクを伴う。国内の世論も慎重な姿勢を示しており、政府は難しい判断を迫られている」と指摘します。
訓練と兵器提供:英国のこれまでの支援
英国は2022年の侵攻開始以降、5万人のウクライナ兵を国内に招き、軍事訓練を実施してきました。少人数の医療チームはウクライナに派遣されていますが、部隊配備には至っていません。兵器面では、巡航ミサイル「ストームシャドー」や主力戦車「チャレンジャー2」などを提供しています。
英国の選択:国際社会の動向も注視
ウクライナへの派兵は、英国にとって極めて難しい選択です。国内の世論、同盟国との関係、そして何よりもウクライナ情勢の行方を見極めながら、慎重な判断が求められます。今後の国際社会の動向にも注目が集まります。