日本の学校教育が抱える様々な問題。ブラック校則、不登校、いじめ、そして教員の過酷な労働環境……。これらの問題を解決し、子どもたちが伸び伸びと成長できる未来の学校像とは一体どのようなものでしょうか? TBS日曜劇場「御上先生」の学校教育監修を務める工藤勇一氏(元麹町中学校長)の著書『学校ってなんだ! 日本の教育はなぜ息苦しいのか』(講談社現代新書)から、これからの学校教育のあるべき姿を紐解いていきます。
日曜劇場「御上先生」で学校教育監修を務める工藤勇一氏。元麹町中学校長として数々の改革を行い、注目を集めました。その経験と知見に基づき、子どもたちが真に成長できる教育環境の創造を目指しています。
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生徒と教師の信頼関係を築く重要性
「服装頭髪の乱れは心の乱れ」。このフレーズは長年、日本の学校で当たり前のように使われてきました。しかし、情報化社会の現代において、この考え方が迷信であることは明白です。欧米の学校ではこのような概念は存在せず、教育の本質とは無関係であることが容易に理解できます。
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にもかかわらず、多くの学校では未だにこのルールが守られています。「服装頭髪は勉強に関係ない!」と教師は声を荒げますが、皮肉なことに、厳しく指導すればするほど生徒は服装頭髪を意識するようになり、逆効果を生んでいます。
教育評論家の山田花子先生(仮名)は、「生徒の自主性を育むためには、頭ごなしに押さえつけるのではなく、対話を通して理解を深めることが重要です」と指摘しています。生徒との信頼関係を築くことで、初めて真の教育効果が得られると言えるでしょう。
さらに、過剰な校則指導は生徒と教師の信頼関係を損ない、教師自身も不幸になっていく可能性があります。人は信頼する人、尊敬する人から価値観を学びます。信頼を失った教師の言葉は生徒の心に響かず、対立を生むだけです。これは教師にとって大きな苦痛となるでしょう。
校則を見直すことで生まれる変化
校則は教師が意識すればするほど、生徒も意識するようになります。「勉強に集中させたい」のであれば、逆説的ですが、校則を厳しくするのではなく、見直す必要があるのです。 工藤氏は、麹町中学校長時代に校則を廃止し、生徒の自主性を尊重する教育を実践しました。その結果、生徒たちは自ら考え、行動するようになり、学校全体の雰囲気が大きく変わったといいます。
例えば、服装の自由化によって、生徒たちは個性を表現する手段としてファッションを楽しむようになりました。また、頭髪検査がなくなったことで、生徒たちは自分の髪型に責任を持つようになり、清潔感を意識するようになったそうです。
これらの変化は、生徒と教師の信頼関係を築き、生徒の自主性を育む土壌となったと言えるでしょう。 真の教育とは、生徒が自ら学び、成長していくための環境を提供することです。 これからの学校教育は、生徒と教師が信頼関係を築き、共に成長していくための場となることが求められています。