三菱UFJ銀行元行員による貸金庫窃盗事件:14億円被害の裏に巧妙な手口

メガバンクの一角、三菱UFJ銀行で発生した顧客の貸金庫からの金品盗難事件。元行員の今村由香理容疑者(46)が逮捕され、銀行の信用は大きく揺らいでいます。被害額は約14億円、被害者は約70名にものぼり、その背後には驚くほど周到に計画された犯行の手口が隠されていました。本記事では、事件の概要と巧妙な手口、そして今後の銀行の対応について詳しく解説します。

事件の概要:顧客70名、被害額14億円に

2024年9月、三菱UFJ銀行練馬支店で勤務していた今村容疑者は、顧客の貸金庫から金塊20kgを含む金品を盗み出した容疑で、2025年1月14日に逮捕されました。銀行側は1月16日に被害状況を発表し、被害額は約14億円、被害者は約70名に上ることが明らかになりました。今村容疑者は盗んだ金品をFX取引や競馬につぎ込み、損失の穴埋めに犯行を繰り返していたと供述しています。

altalt逮捕時の今村由香理容疑者(時事通信社)

巧妙な手口:立場を悪用した隠蔽工作

今村容疑者は1999年に一般職として三菱UFJ銀行に入行し、その後総合職に転換、事件当時は支店長代理という要職に就いていました。貸金庫の鍵も管理しており、その立場を悪用して犯行に及んだとみられています。彼女の巧妙な手口は、以下の点に集約されます。

窃盗メモとスマホ撮影による記録

盗難の発覚を防ぐため、今村容疑者は盗んだ金品の配置をスマートフォンで撮影し、何をどこから盗んだかを記録した「窃盗メモ」を作成していました。これは、後で金品を元に戻すための準備だったとみられています。

システム不調を装った顧客対応

被害に気づいた顧客が問い合わせに来た際には、今村容疑者は自らシステムの電源を切ることで「システム不調」を装い、顧客を追い返していました。貸金庫周りの防犯カメラの管理権限も持っていたため、証拠隠滅も容易だったと考えられます。

顧客への直接返却工作

発覚後も、今村容疑者は「銀行内に忘れ物が…」と顧客に説明し、盗んだ金品を直接返却することで事態の収拾を図ろうとしていました。これは、時間稼ぎと被害拡大の抑制を目的とした隠蔽工作だったと推測されます。

勤務態度の異変:夕方の「昼休憩」

同僚の証言によると、今村容疑者は毎日夕方16時頃に「昼休憩」をとっていました。貸金庫の一般客利用時間は15時までであることを考えると、この時間帯に犯行を行っていた可能性が高いとみられています。

altalt黒縁メガネにショートボブヘア姿の今村容疑者の素顔

今後の課題:銀行の信用回復と再発防止策

今回の事件は、メガバンクの信用を大きく損なう重大な事件です。銀行側は、被害者への適切な補償はもちろんのこと、再発防止策の徹底が求められます。内部管理体制の強化、従業員教育の充実など、抜本的な対策が必要です。金融庁も、各金融機関に対し、同様の事件が発生しないよう指導を強化していく方針です。

金融犯罪コンサルタントの山田一郎氏(仮名)は、「今回の事件は、内部統制の甘さを露呈した典型例と言えるでしょう。銀行は、顧客の信頼を取り戻すために、透明性の高い情報開示と再発防止策の実施が不可欠です」と指摘しています。

この事件は、私たちに金融機関のセキュリティ対策の重要性を改めて認識させました。今後の捜査の進展と銀行の対応に注目が集まります。