自民党「プラチナバッジ」の勢力と無所属候補の躍進:参院選東京選挙区の激戦

ホテルニューオータニの豪華な「芙蓉の間」で、2025年7月7日、「第27回参議院議員通常選挙」の東京選挙区に自民党公認で立候補した鈴木大地氏(58)の決起集会が盛大に開催されました。ソウル五輪金メダリストとしての輝かしい実績を持つ鈴木氏は、「プールには何度も飛び込んでいたのですが、今回、思い切って政治の舞台に飛び込むことにいたしました」と述べ、新たな挑戦への意欲を示しました。この日の集会には、小池百合子東京都知事や自民党の森山裕幹事長、遠藤利明元五輪相といった政界の重鎮に加え、バルセロナ五輪金メダリストの岩崎恭子氏や元競泳選手の伊藤華英氏らスポーツ界の著名人も駆けつけ、激励の言葉を送りました。自民党が長年培ってきた農協、郵便局、宗教法人、医師会、建設業界などの各種団体関係者、さらには東京選出の自民党所属国会議員や都議会議員も次々と登壇し、強固な組織力を背景にした決起集会となりました。

自民党「プラチナバッジ」の勢力と無所属候補の躍進:参院選東京選挙区の激戦

永田町で自民党公認を得ることは「プラチナバッジ」と称され、当選が約束されたも同然とされるほどの強みがあります。鈴木氏の自信に満ちた表情は、まさにその「プラチナバッジ」の力を象徴しているかのようでした。

自民党・鈴木大地氏の「プラチナバッジ」戦略

鈴木大地氏の決起集会は、自民党の圧倒的な組織力と支援体制を明確に示しました。会場のホテルニューオータニ「芙蓉の間」は、各界の著名人が利用する一流の場所であり、その選択自体が自民党の財力と影響力を物語っています。鈴木氏は、自身の水泳選手としての経験を政治の世界に重ね合わせ、新たな飛躍を誓いました。集会には、東京都政の顔である小池百合子知事をはじめ、党の要職にある森山裕幹事長、元オリンピック担当大臣の遠藤利明氏など、影響力のある政治家が多数出席。加えて、岩崎恭子氏や伊藤華英氏といったオリンピックメダリストの存在は、鈴木氏の知名度と好感度をさらに高める効果がありました。自民党が長年にわたり築き上げてきた、農協、郵便局、宗教法人、医師会、建設業界といった各種団体との強固な連携は、候補者にとって盤石な支援基盤となります。国会議員から市議会議員に至るまで多くの地方議員が党に所属しているため、公認を得られれば選挙活動における人的・組織的サポートは計り知れません。鈴木氏の自信に満ちた姿は、まさにこの「プラチナバッジ」の恩恵を享受していることを示唆していました。

無所属・山尾志桜里氏の「泡沫」からの巻き返し

鈴木氏の華やかな集会とは対照的に、ほぼ同時刻、無所属で参院選東京選挙区に出馬した山尾志桜里元衆議院議員(50)は、二子玉川駅近くの百貨店前でわずか5名のボランティアと共に汗を流していました。2025年6月10日には国民民主党から比例代表の公認候補として出馬会見を開いたものの、過去の不倫問題が再び批判を浴び、翌日には公認内定が取り消されるという事態に直面。一度は出馬が絶望視されたものの、7月1日に東京選挙区から無所属での出馬を表明しました。

東京選挙区は改選数6議席に加え、非改選の欠員1議席を争う合併選挙で、計7議席が争われます。当選には60万票が必要と目され、無所属候補にとっては非常に厳しい戦いと見られていました。当初は「やけっぱち出馬」「泡沫候補」と揶揄される声もありましたが、日を追うごとに山尾氏の街頭演説には聴衆が集まり出し、情勢に変化が見え始めます。演説の前半では、漫画家の小林よしのり氏がマイクを握り、聴衆の集客に貢献。告示から10日後の13日の「ラストサンデー」には、2009年の民主党時代の同期当選者で現在は無所属の福島伸享衆議院議員や小川敏夫元参議院議員ら国会議員も応援弁士として駆けつけました。福島氏は、外国人への排外主義が蔓延する現在の異様な選挙戦において、「中道はぽっかり空いている」とし、山尾氏の「中道ど真ん中」の政策が聴衆の反応が良いと指摘。「この選挙を乗り越えれば大きな政治家になれる」と山尾氏の勝利に期待を寄せました。当初は孤立無援の記者会見からのスタートでしたが、ボランティアの数も着実に増加し、山尾氏の周囲には熱気が生まれつつあります。

選挙ポスター貼りの「0円」戦略とボランティアの力

自民党職員が匿名を条件に注目しているのは、山尾氏のポスター貼り戦略です。国政政党所属の候補者は通常、引っ越し業者や宅配業者に地域単位で費用を支払い、公示日には都内全域にポスターを貼り終え、選挙体制を整えます。しかし、政党に属さない無所属候補には資金が限られ、ボランティアに頼らざるを得ません。

東京都内には約1万4000ヵ所の掲示板があり、23区内ですら全てを貼り切るのは至難の業とされますが、山尾氏のポスターは驚くべき速さで掲示が進んでいました。これは、昨年の都知事選で次点に躍進し、「ボランティアが都内の掲示板を駆け巡り、『0円で全箇所を成し遂げた』」と永田町で話題となった石丸伸二氏(42)の事例を彷彿とさせます。山尾氏の事務所に確認したところ、都内1万4000ヵ所のうち約9割をほぼボランティアの力で貼り終え、残りは1300ヵ所とのことでした。

奥多摩方面を担当したボランティアの木村祐子氏(女性)は、「無所属候補はポスター1枚貼るのも大変」と語り、AIエンジニアの安野貴博氏(34)が先の都知事選で開発したプログラミング活用型ポスター貼り用マップとそのノウハウが活用されていることを明かしました。それでも現地で手作業で貼る労力は大きく、緑豊かな奥多摩の山間部や日原鍾乳洞近くの掲示板にも苦労して到達したと語る一方で、効率を考え御岳山のケーブルカー到着点の掲示板はスルーしたと言います。木村氏は5日間の休日を費やし300ヵ所の掲示板を回りましたが、自民党候補のポスターがどこにでも貼られているのを見て、組織力の違いを痛感したと語りました。

地方議員として唯一山尾氏の活動に参加している杉並区議の田中朝子氏(女性)は、汗を拭いながら「初日は事務所のあるJR吉祥寺駅前で第一声をあげ、三鷹駅前、武蔵境駅前と武蔵野市界隈で演説をしたのも実は選挙カーがなかったから」と明かしました。2日目に大島へ行ったのも、選挙カーがないためポスター貼りを兼ねてだったと言います。しかし、告示から3日後にはようやく選挙カーが手配され、都内を回れるようになりました。当初の不安とは裏腹に、今ではアイドルのコンサートのように山尾氏の団扇を作って演説に参加する人々も現れ、遊説先では地方議員が「応援しています」と声をかけ、ポスターやビラを受け取ってくれるなど、支援の輪が広がりつつあると言います。「ひょっとすると――、と思えるところまできました」と、田中区議は期待を滲ませました。

激戦区東京の行方と政治の未来

連日30度を超える夏日が続く中、山尾氏は演説を終えると、かなりの速度で聴衆に駆け寄り、一人ひとりと握手を繰り返します。その途中で転倒したのか、顎の下にはあざができていました。前述の杉並区議・田中朝子氏は、山尾氏への支援について、「私はかわいそうと思って手伝っているわけではありません。党首並みに有能な人なので国会に戻ってほしいと思うから応援をしている」と語り、その能力への高い評価を示しました。参院選の選挙期間は17日間と比較的長く、この間に何かが起きる可能性も十分に秘めていると田中氏は見ています。

小林よしのり氏は、13日の演説後、「フタを開けてみれば、鈴木大地氏がトップ当選だろう」と見通しつつも、「でもそれでは古い因習のままの政治が続くだけ。高級ホテルで集会をするからお金もかかる。小池知事が(鈴木氏の)集会に参加したのも、議会対策や何やらでの利害関係でのことだろう。組織を固めて、国会議員や地方議員が選挙を手伝って、そんな古いことをいつまでやるんだ。公のために政治をする人を送り込まないと」と、旧態依然とした選挙戦のあり方に警鐘を鳴らしました。

東京選挙区では7議席を巡り32人が立候補する大激戦が繰り広げられています。果たして山尾志桜里氏は、この熾烈な選挙戦において「台風の目」となることができるのでしょうか。今後の動向が注目されます。


東京選挙区候補者一覧

武見 敬三(73)自民
鈴木 大地(58)自民
奥村 政佳(47)立民
塩村 文夏(47)立民
音喜多 駿(41)維新
川村 雄大(41)公明
牛田 茉友(40)国民
奥村 祥大(31)国民
吉良 佳子(42)共産
山本 譲司(62)れいわ
さや (43)参政
小坂 英二(52)保守
西 美友加(53)社民
酒井 智浩(55)みんな
石丸 幸人(52)N党
吉田 綾(40)再生
峰島 侑也(35)みらい
千葉 均(62)誠真
市川 たけしま(57)改革
藤川 広明(53)改革
辻 健太郎(39)無連
桑島 康文(64)諸派
渋谷 莉孔(40)諸派
早川 幹夫(77)諸派
福村 康廣(68)諸派
土居 賢真(53)無
平野 雨龍(31)無
増田 昇(47)無
山尾 志桜里(50)無
吉澤 恵理(55)無
吉永 藍(50)無
高橋 健司(54)無

出典: FRIDAYデジタル