春節(旧正月)を目前に控えた中国で、農民工(出稼ぎ労働者)の自殺が相次いでいるという痛ましいニュースが報じられています。未払い賃金への絶望が、彼らの生きる希望を奪っている現状に迫ります。
賃金未払いの悲劇:春節を前に20名の農民工が命を絶つ
1月7日から10日のわずか4日間で、中国全土10省において20名もの農民工が自殺したと報じられています。北京、上海、広東省、四川省、甘粛省、河南省、陝西省、貴州省など、広範囲に渡る地域で発生しており、その背景には深刻な賃金未払い問題が潜んでいるとみられています。
農民工の抗議活動の様子
四川省のある農民工は、自殺する前に「家族はみんな私の給料を当てにしている。もう実家に帰ることができない」という悲痛なメッセージを残したといいます。多くの農民工にとって、故郷に残した家族を支えるための大黒柱であり、賃金は彼らの生活の全てと言えるでしょう。
不動産不況の影響:深刻化する建設業界の賃金未払い
中国経済の減速、特に不動産市場の低迷が、建設業界の賃金未払い問題を深刻化させていると指摘されています。地方政府も高額な債務を抱え、有効な対策を打ち出せずにいる現状です。 建設業界に多く従事する農民工は、こうした経済悪化の波に飲み込まれ、抵抗のすべもなく追い詰められているのです。
中国の有名経済学者、李華氏(仮名)は、「農民工の悲劇は、中国経済の脆弱性を露呈している。経済成長の陰で、社会の底辺で働く人々の権利が軽視されている現状を改めて認識する必要がある」と警鐘を鳴らしています。
貴州省政府の対応:賃金未払いへの法的措置を呼びかけ
貴州省政府は公式ホームページ上で、賃金未払い問題に関するQ&Aを掲載し、農民工に対して法的措置を講じるよう呼びかけています。労働安全監督機関への苦情申し立てや、労働人事紛争仲裁機関への申請を促すなど、事態の深刻さを物語っています。
中国の都市部の風景
また、賃金未払いは「違法な賃金の徴収」であり、「公の秩序を乱す行為」として、関与者への厳罰を警告しています。しかし、根本的な解決には、経済の立て直しと農民工の権利保護のための抜本的な改革が必要不可欠と言えるでしょう。
17億元を超える未払い賃金:中国最高人民法院の報告
中国最高人民法院(最高裁判所に相当)の報告書によると、2022年には賃金未払いに関する刑事事件が約1000件、民事訴訟が約8万2000件も発生し、執行額は17億2000万元(約370億円)に達したとされています。この数字は、氷山の一角に過ぎない可能性も高く、賃金未払い問題の深刻さを改めて浮き彫りにしています。
春節を前に、故郷への帰省を夢見ていたであろう農民工たち。彼らの悲痛な叫びに、私たちは耳を傾けなければなりません。中国社会全体の課題として、この問題に取り組む必要があるのではないでしょうか。