北朝鮮では、金正恩国務委員長主導のもと、地方工場建設事業が精力的に進められています。国営メディアは竣工式の様子を華々しく報道し、地方活性化の象徴として盛んにアピールしています。しかし、その実態は、完成を宣言した工場でさえも正常に稼働していない可能性があるという分析が出ており、その真意に注目が集まっています。
地方工場建設ブームの光と影
北朝鮮労働新聞は、咸州郡の地方工業工場竣工式の様子を大々的に報じました。現代的な設備を備えた食料工場、日用品工場、衣類工場は、人々の生活を豊かにすると期待されています。2023年に入ってから既に7件目の竣工式となり、「地方発展20X10政策」実現に向けた金正恩委員長の強い意気込みが感じられます。労働新聞も、5カ年計画の完遂に向けた重要な一歩だと強調しています。
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しかし、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)は、衛星画像の分析から、これらの工場が実際には稼働していない可能性を指摘しています。例えば、黄海北道銀波郡の工場敷地は周辺よりも気温が低く、暖房設備の使用が確認できないとのこと。黄海北道載寧郡の工場も同様で、周辺の住宅街と変わらない温度だったそうです。冬期に暖房を使わずに工場を稼働させるのは難しく、「見せかけの竣工」ではないかとの疑念が生じています。韓国農漁村公社農漁村研究院のキム・ヒョク研究員も、RFAに対し、熱が感知されない工場は稼働していない可能性が高いと指摘。竣工式のために一部区間だけ稼働させている可能性もあると分析しています。
稼働率の低い工場の実態
民間衛星「プラネット・ラボ」の画像からも、平安南道粛川郡の地方工業工場や咸鏡南道新浦市の養殖事業所の工場の屋根に雪が積もっている様子が確認できます。これは、工場内の電気稼働率が低いことを示唆していると考えられます。
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これらの分析結果を総合的に見ると、北朝鮮が発表している地方工場建設の成果には疑問符が付くと言わざるを得ません。本当に地域経済の活性化に貢献しているのか、それとも政治的なパフォーマンスに過ぎないのか、今後の動向を注視する必要があります。
金正恩委員長の狙いは? 最高人民会議でのメッセージに注目
金正恩委員長は、22日に開催される最高人民会議を前に、公の場への登場を控えるなど、静かな動きを見せています。これは、トランプ米政権発足直後というタイミングを考慮し、対米メッセージを慎重に調整しているためと考えられます。さらに、2023年12月に韓国側へ宣言した「敵対的な二つの国家関係」を新たな社会主義憲法に反映させるかどうかも、今回の最高人民会議の焦点となるでしょう。
これらの動きから、金正恩委員長は国内の経済状況と国際情勢を睨みつつ、戦略を練っている様子が伺えます。地方工場建設事業の真意、そして最高人民会議で発信されるメッセージは、今後の北朝鮮の行方を占う上で重要な手がかりとなるでしょう。