国立附属中学校の数学教員、織田茜さん(仮名)へのインタビューを通して、世間で認識されている「国立附属校は残業代が出る」というイメージと現実のギャップ、そして知られざる長時間労働の実態に迫ります。理想の教育を求めて公立中学校から転職した織田さんが直面する、想定外の現実とは?
夢と現実の狭間で:国立附属校への転職
20年以上に渡り公立中学校で教鞭を執ってきた織田さん。教員の働き方改革や、より良い授業の実現を目指し、国立大学附属中学校へ転職を決意しました。しかし、そこで待っていたのは、想像とは異なる厳しい現実でした。
国立大学附属中学校の外観イメージ
残業代が出るという幻想:「モヤッとする」現状
「国立附属校は残業代が出る」という報道を目にする度に、織田さんは「モヤッとする」といいます。給特法の適用外である国立附属校では、労働基準法に基づき残業代が支給されるはずですが、実際にはそうではないケースが多いのです。織田さん自身、毎日2時間程度の時間外労働をしていますが、残業代は支給されていません。
変形労働時間制という名の落とし穴
多くの国立附属校で導入されている「変形労働時間制」。繁忙期と閑散期の労働時間を調整するこの制度は、適切に運用されれば問題ありません。しかし、実態は残業代不払いを正当化する隠れ蓑となっているケースも少なくありません。
織田さんの勤務校では、タイムカードなどの客観的な労働時間管理ツールが導入されていません。結果として、変形労働時間制の名の下に、長時間労働が常態化し、残業代が支払われない状況が放置されているのです。
立ち上がるか、諦めるか:教員たちの苦悩
労働基準監督署への通報や裁判といった手段で権利を主張することも可能ですが、織田さんは「正直、そこに費やす時間も気力もない」と語ります。 教育現場の最前線で働く教員にとって、時間と気力は限られた貴重な資源。本来であれば子どもたちのために使うべきエネルギーを、労働環境の改善のために費やすことに抵抗を感じる教員は少なくありません。
国立附属校ならではのジレンマ
国立附属校には、研究活動や大学との連携など、公立学校にはない独自の業務が存在します。これらの業務は、教育の質を高める上で重要な役割を果たしますが、同時に教員の負担を増大させる要因にもなっています。 教育への情熱と現実的な労働環境のギャップに挟まれ、多くの教員が苦悩しているのです。
例えば、教育コンサルタントの山田一郎氏(仮名)は、「国立附属校の教員は、教育研究への高い意識と責任感を持つ一方で、労働時間管理の意識が低い傾向がある」と指摘します。「タイムカードの導入や労働時間管理システムの構築など、学校全体で働き方改革に取り組む必要がある」と提言しています。
未来への展望:より良い教育環境を目指して
織田さんのような教員の声に耳を傾け、長時間労働の実態を明らかにすることで、より良い教育環境の実現に繋げることが重要です。 国立附属校の教員たちが、本来の業務に集中できるよう、労働時間管理の徹底や働き方改革の推進が求められています。