20日投票の参議院議員選挙で、これまでニッチな存在と見られていた参政党が、既存政党への不満を背景にその勢力を急拡大させている。参政党の数ある公約の中で、特に子育て世代を惹きつけているのが食に関する項目だ。ただ、実効性を考えればこの公約は選挙のためのプロパガンダとしか思えない。
有機の方が安全か
参政党は、食の安全と食育の推進のため、「給食の有機食材使用義務化を加速」を公約に掲げている。給食の有機食材使用については、これまでも日本共産党や立憲民主党が国会で導入を求めている他、超党派議員でつくる「オーガニック給食を全国に実現する議員連盟」で自民党議員も顧問や共同代表に名を連ねており、参政党だけに特化した政策というわけではない。
また、有機栽培をめぐっては、国も「みどりの食料システム戦略」で農地拡大を進めている。それだけに、給食での有機農産物推奨は一見、何の問題もないと思うかもしれない。
ただ、そもそもなぜ給食を有機農産物にしたいのか。子育て世代がこれに賛同するのは、「子供に安全な野菜を食べさせたい」との思いがあるからではないだろうか。しかし、有機栽培の野菜も慣行栽培(一般的に広く行われている化学肥料や農薬を適切に使った栽培法)の野菜も、安全という点では全く変わらない。
「そんなことはない、農薬を使えば野菜に残留し、たとえわずかな量でもその野菜を食べ続ければ、将来的に健康によくないことが起こるに違いない」と主張する人もいるだろうが、基準値以内の残留農薬が原因で健康被害が起きたという報告は聞いたことがない。農薬の残留基準値はかなり厳しく決められており、基準値ぎりぎりの野菜を毎日食べ続けても安全となる量が設定されている。
そして、この規制を守っているかは厳しくチェックされている。たまに基準値超の野菜がみつかることがあるが、意図的に農薬を混入させたケースを除き、たとえ食べたとしても健康に影響を及ばさない量で、実際に健康被害は出ていない。