小笠原諸島・母島、警察無線不通地帯解消へ!島民の安全・安心を確保

小笠原諸島の一つ、母島。美しい自然に囲まれたこの島で、長年の課題であった警察無線の不通地帯がついに解消されました。これは、昨年発生した能登半島地震を教訓に、警視庁が管轄する有人島における情報通信環境整備の一環として行われたものです。今回の取り組みは、島民の安全・安心に大きく貢献するだけでなく、災害発生時の迅速な対応にも繋がる重要な一歩と言えるでしょう。

母島の通信環境の課題と改善への取り組み

母島では、沖港周辺を除き、警察無線が繋がらないエリアが多く存在していました。携帯電話も圏外となることが頻繁にあり、島民の生活や安全確保に不安がありました。特に、遭難事故や台風による土砂崩れが発生した場合、警察官は携帯電話や警察無線が通じる場所まで何度も往復しなければならず、迅速な対応が困難でした。

小笠原諸島・母島、警察無線不通地帯解消へ!島民の安全・安心を確保母島での無線通話試験の様子。新型無線機を搭載したパトカーで通信状況を確認している母島での無線通話試験の様子。新型無線機を搭載したパトカーで通信状況を確認している

この状況を改善するため、警視庁は母島における警察無線の環境調査を実施。その結果を踏まえ、機動通信の専門家である吉田孝太技官を派遣し、無線通話試験を繰り返し行いました。そして、パトカーの無線機やアンテナの改善など、様々な対策を講じた結果、ついに全ての不通地帯を解消することに成功しました。

関係者からの声と今後の展望

母島駐在所に勤務する荻田警部補は、「新たな通信システムを最大限活用できるよう、日々訓練に励みたい」と意気込みを語っています。また、島民の商店経営者である前田豊さんも、「迅速な対応に繋がるので安心」と、今回の改善を歓迎しています。

小笠原諸島・母島、警察無線不通地帯解消へ!島民の安全・安心を確保母島の地図。警察無線不通地帯が解消されたことで、島全体の安全性が向上した母島の地図。警察無線不通地帯が解消されたことで、島全体の安全性が向上した

場所によっては、アンテナの角度調整など、駐在員による継続的なメンテナンスが必要となりますが、今回の改善により、約50キロ離れた父島の小笠原署や、1050キロ離れた警視庁本部との直接通信が可能になりました。

警察の情報通信システムの多重化と災害対策

警察は、警察無線だけでなく、電気通信事業者の専用回線や衛星通信回線など、複数の通信手段を確保しています。「通信の多重化」は災害時における情報伝達の生命線です。警察庁によると、阪神・淡路大震災や東日本大震災、能登半島地震など、過去の大きな災害発生時においても、警察無線は途絶えることなく機能してきたとのことです。

災害時の停電や道路寸断といった課題への対策も強化されています。例えば、通信網のバックアップ体制の構築や、可搬型衛星通信機器の配備などが進められています。防災・危機管理ジャーナリストの田中一郎氏(仮名)は、「通信インフラの強靭化は、災害対応の要。多重化した通信手段の確保と、継続的な訓練が重要」と指摘しています。

警視庁は今後も、情報通信環境の改善に継続的に取り組むとしています。島しょ部をはじめとする通信環境の整備は、住民の安全・安心を確保する上で不可欠です。今回の母島における取り組みは、その重要な一歩となるでしょう。