7月の参院選で大躍進が予測されている参政党は、その勢いと共に神谷宗幣代表の一挙手一投足が大きな注目を集めています。彼らが掲げる「日本人ファースト」を訴える姿勢や、減税と大胆な財政出動を打ち出す経済政策は、一部の層から熱烈な支持を得ています。一方で、こうした思想や政策をポピュリズム的な人気取りだと批判する声も少なくありません。参政党の政策に対する賛否は、その思想的背景により明確に分かれており、本稿では政策の是非を問うものではありません。しかし、ここで注目したいのは、神谷代表がハードなジェルで固めた、あのツンツンと尖った独特のヘアスタイルです。なぜなら、この髪型こそが、彼らの掲げるポピュリズムを雄弁に物語っていると考えるからです。
神谷代表の「攻撃的な」ヘアスタイルに隠された意図
現在47歳の神谷宗幣代表のヘアスタイルは、率直に言って、その年齢の政治家としては非常に攻撃的であり、挑戦的な印象を与えます。一般的に、政治家が落ち着きや貫禄をアピールしようとする傾向がある中で、彼のハリネズミのようなフォルムは逆行していると言えるでしょう。これは、彼自身が社会に溶け込むよりも、むしろ際立った異質な存在として認知されたいという明確な意図を示唆しています。毛先のトゲトゲしさは、計画的な「ノイズ」として機能し、有権者の記憶に強く刻まれることを狙っているかのようです。しかし、このアプローチは、従来の穏健な保守勢力が採用する態度とは大きく異なります。ここに、参政党が伝統的な保守ではなく、特定の層に強く訴えかける「反動的な保守」であることを示す根拠が見出せます。
欧米のポピュリスト政治家と「ヘアスタイル」の共通項
このようなポピュリスト的な「保守」政治家が視覚的なイメージを重視する傾向は、欧米の政治トレンドでも顕著に見られます。ドナルド・トランプ元米大統領、ボリス・ジョンソン元英首相、そして現在のアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領など、彼らは皆、一様に型にはまらない独特のヘアスタイルを特徴としています。イギリスの高級紙『The Guardian』(2023年12月3日配信)も、これらの政治家に見られる特徴的な髪型こそが、ポピュリズムの源泉であると分析しています。なぜ、ポピュリスト的な右派の政治家は、このような過剰なヘアスタイルを好むのでしょうか。その理由の一つに、現代の選挙制度と有権者の情報接触のあり方が挙げられます。複雑な政策論や細かな計画を言葉で説明するよりも、候補者の持つカリスマ的なイメージや視覚的印象の方が、有権者に強い説得力を持つことがあるからです。
ロンドン大学クイーン・メアリー校のティム・ベイル教授は、この現象について次のように語っています。「全ての政治家には各自のブランドがあるが、ことポピュリストということになると、そのブランドは飛び抜けたものでなければならない。髪型はその一部なのだ。それによって、政策にほとんど興味を示さない有権者に認知されることになるのだ。」明らかに異質なヘアスタイルを持つ政治家が、堂々と攻撃的な言動を繰り返す。この光景は、人々に強いカリスマ性を感じさせる構図を生み出しているのです。
街頭演説で熱弁を振るう参政党の神谷宗幣代表、その特徴的なヘアスタイル
視覚的戦略としてのヘアスタイル:ポピュリズムの象徴
参政党の神谷宗幣代表の独特なヘアスタイルは、単なる個人の趣向を超え、現代のポピュリズム政治家が用いる視覚的戦略の一環として捉えることができます。政策の内容を細部まで理解せずとも、有権者に強い印象を与え、共感を呼び起こす「カリスマ的ブランド」を確立する上で、このような異質な外見は極めて有効なツールとなります。欧米の事例にも見られるように、特徴的なヘアスタイルは、政治家が自らの「型破りさ」や「既存の体制への反抗」を無言のうちにアピールする手段となり、政策よりも強い感情的な結びつきを有権者との間に築く基盤となり得るのです。この分析は、政治におけるイメージ戦略と、それが有権者の心理に与える影響の重要性を示唆しています。
参考文献:
- The Guardian (2023年12月3日). “Why do populist rightwingers all have big hair? It’s not just a vanity project”.
https://www.theguardian.com/commentisfree/2023/dec/03/why-do-populist-rightwingers-all-have-big-hair-its-not-just-a-vanity-project