【三重・伊勢市】市美術展覧会で「表現の不自由」をテーマにした作品に慰安婦像、市側が展示不可に…作家は憲法違反と反発、訴訟の構え
問題視されたのは、同市柏町のグラフィックデザイナー花井利彦さん(64)が制作したB2判のポスター「私は誰ですか」。黒を背景に、赤く塗られた手のひらと石を配し、左上には中国人従軍慰安婦像の写真をコラージュした。「私は誰ですか」と中国語、ハングル、英語、日本語で添えてある。「表現の不自由」をテーマにしたという。
花井さんは、日本グラフィックデザイナー協会の会員。伊勢市内の中学校の校章や、一月にオープンした市立伊勢総合病院の新病棟のロゴタイプも手掛けた。市展にも、八年前から審査委員や運営委員として関わっている。
市展では今回、市民らから公募した絵画、写真などから入選・入賞作と、審査・運営委員らの計約二百五十点を展示。市教委によると、花井さんの作品は運営委員の作品として二十日に搬入された。正式に展示見合わせを伝えたのは開幕直前の二十八日。市教委文化振興課の山口一馬課長は「あいちトリエンナーレで注目を浴びた『平和の少女像』と、それに伴う混乱を予想させるとして、慰安婦像の写真の使用を問題視した」という。
その後、花井さんは像の部分を黒インクでぼやかしたり、黒い粘着テープを張ったりと三度手直しをして会場に展示するよう訴えたが、市側は三十日に鈴木健一市長らの判断も仰ぎ、展示不可と再度伝えた。
鈴木市長は取材に、「あいちトリエンナーレでは脅迫やテロ行為の予告もあった。われわれは市民の生命と財産、運営の安全性を第一優先に考えて判断した」と答えた。花井さんは「市側の検閲で、憲法違反だ」と憤っている。
2019年10月31日 朝刊
https://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2019103102000092.html