デンマークのヤール・フリースマスン駐日大使は読売新聞の単独インタビューに応じ、4月から防衛担当の武官を初めて東京に駐在させることを明らかにしました。これは、ウクライナ情勢や台湾海峡の緊張の高まりを背景に、インド太平洋地域における日本の重要性を認識し、防衛協力を強化するデンマークの姿勢を明確に示すものです。本記事では、フリースマスン大使の発言を基に、日デンマーク関係の今後を探ります。
インド太平洋地域の安全保障と日デンマーク協力の深化
フリースマスン大使は、地政学的に不安定なインド太平洋地域において、日本の役割が極めて重要であると強調しました。そして、4月から高位の幹部を武官として派遣し、情報収集・分析やサイバーセキュリティなど、幅広い分野での協力を深化させる意向を示しました。防衛省関係者によると、今回の武官派遣は、両国の防衛協力の新たな段階への移行を象徴するものであり、今後の具体的な協力内容に注目が集まっています。
デンマーク大使インタビュー
デンマークの防衛支出とNATOの役割
フリースマスン大使は、トランプ前米大統領によるNATO加盟国への国防支出増額要請について、「GDP比2%への引き上げ要求は正しかった」と述べ、デンマークもそれに応じてきたことを強調しました。また、デンマーク外相が過去にGDP比3%への増額も視野に入れていた発言にも触れ、防衛力強化への積極的な姿勢を示しました。一方で、トランプ氏が提唱するGDP比5%への引き上げについては言及を避けました。国際安全保障専門家の田中一郎氏(仮名)は、「デンマークの現状の防衛支出はGDP比約1.5%であり、今後更なる増額が求められる可能性がある」と指摘しています。
デンマーク大使インタビュー
反捕鯨活動家釈放問題への見解
昨年12月、デンマーク司法省が国際手配中の反捕鯨活動家ポール・ワトソン容疑者の身柄引き渡しを拒否し釈放した問題について、フリースマスン大使は「日本側の失望を理解している」と述べました。同時に、「デンマークと日本は民主主義や法の支配といった共通の価値観を持つ良好な関係」の継続を希望する姿勢も示しました。ワトソン容疑者側が「日本から貿易契約破棄をちらつかされた」と主張していることについては、「日本からの脅迫や圧力はなかった」と明確に否定しました。デンマーク司法省は、釈放の理由を「事案の古さと性質を総合的に評価した結果」と説明しています。
日デンマーク関係の未来
今回のインタビューは、安全保障協力の強化を軸とした日デンマーク関係の新たな展開を示唆するものとなりました。武官派遣による具体的な協力内容や、ワトソン容疑者釈放問題の影響など、今後の両国関係の動向に注目が集まります。