東京都内での再開発に伴う樹木の伐採に市民らが反対する動きが広がる中で、行政側も工事続行に向けて強硬な姿勢を貫いている。特に千代田区の神田警察通りの街路樹のイチョウ伐採(本誌2024年4月26日・5月3日合併号で既報)と明治神宮外苑の樹木伐採(同11月8日号・15日号既報)では市民側との対立がさらに深まっている。
まず神田警察通りについては、同区が9月に、見守り活動をする市民2人に対し、伐採工事対象のイチョウ周辺に設置する作業帯への立ち入りを禁止する仮処分申請を東京地裁に行なった。立ち入りを禁じられた一般社団法人「街路樹を守る会」代表の愛みち子さんと雑誌『建築ジャーナル』編集長の西川直子さんのほか、市民らが11月21日に都庁で開いた記者会見で明らかにした。
それによると、市民らは工事について同区と話し合いのうえ調整することを求めているが、同区が応じず工事強行の可能性があるため、伐採対象のイチョウの周りで見守りを続けている。同区による伐採工事は、22年4月からこれまでに夜間に複数回行なわれ、計18本のイチョウが伐採されている。市民側による見守りもすでに720日以上続いている。
伐採対象区域は同区一ツ橋から神田駅周辺までの1・3キロで、そこにはイチョウなど約200本の樹木が並んでいる。当初の計画ではすべての樹木を伐採するはずだったが、16年に反対陳情などが相次いだため一部の街路樹が残った。21年の区議会で、改めてすべての街路樹を伐採する方針が議決された。市民らの作業帯への立ち入り禁止の申し立ては今回の前に8人に対して行なわれており、市民側が処分に対して抗告中だ。
さらに会見で市民らは、今年の4月に行なわれた伐採工事の事例を基に数々の問題点を指摘した。同区のほか、同区工事を担当する業者からも工事着手などの連絡はなく、現場で問いかけても返答がないまま作業は進められた。高所作業車やクレーンを作業員や住民のほぼ直上に上げて大木の伐採を行なうという、工事の危険性への懸念も表明。国土交通省が定める土木工事安全施工技術指針に適う作業なのかとの疑問も表明した。また、街路樹の下にいる市民らに対する無許可でのカメラ撮影や個人名の連呼も問題視。非人道的だと指摘した。
愛さんは「街路樹は街の環境を守っている貴重な存在。樹木は生きている。同じ街で生きる隣人です」と話し、樹木伐採をやめるように訴えた。