和食の定番メニュー・煮物。長い歴史を持ち、多くの人たちに愛されてきた料理で、“おふくろの味”の代表格に挙げる人もいるだろう。一方で、自炊している人の中でも「最近煮物は食べていないな」という人も多いのではないか。なぜ煮物を作らなくなったのか、食べなくなったのかを聞くと、現代に生きる人たちの生活事情が見えてきた。
調理に時間がかかる
東京都で一人暮らしをしているTさん(30代男性)はコンサルティング会社に勤めていて、忙しい日々を送っている。時間があれば自炊もするが、「煮物」は作ったことがない。「問題は、時々しか使わない調味料が必要なこと」だという。
「実家では親が肉じゃがやひじき煮なんかを作っていましたが、一人暮らしになると、自分ではそういう煮物は作りませんね。家に帰るのは毎日21時くらいで、ただでさえ料理を作るのは面倒なのに、煮物は時間がかかる。そのうえ、調味料の問題があります。酒やみりんなんかを買うと、絶対余らせてしまう」
とはいえ、本来は料理好きというTさん。何年か前に豚の角煮を作ろうと思い立ち、実行したことがあるが、それ以来多忙を極めたこともあり、作っていない。
「そういえば冷蔵庫に、その時買った料理酒が残っているような気がします(苦笑)。煮物に必要な調味料って、毎日がっつり料理をする人じゃないと全部使い切れない。それはそれでなんだかもったいなくて、塩とこしょう、醤油以外の調味料が必要な料理は作らなくなりました」(Tさん)
煮物は「コンビニで買う」
野菜の価格を気にする東京都在住のMさん(30代女性)も「煮物は作らない」。少量が作りづらいことを指摘する。
「煮物って、作ろうとすれば基本的に大量にできてしまって、一人で一日では食べ切れない。私は会社帰りに同僚や友人とご飯を食べて帰ることもよくあり、そうなると作り置きが無駄になりがち。かといって何日も同じ煮物を食べるのは飽きるので、作りません」
そんなMさんが最近ハマっているのは、「コンビニの少量パックの煮物」だという。
「コンビニのパック惣菜で、一人用の肉じゃがや筑前煮なんかがあるんです。レンジであたためるだけですぐ食べられて、便利ですよ。メインは自分でつくるという時の副菜としても重宝しています。煮物は買うのがいちばんです」(Mさん)