尹大統領、内乱首謀容疑で起訴の波紋:専門家から手続きの疑問噴出

韓国検察が尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領を内乱首謀の疑いで起訴したという衝撃的なニュースが駆け巡りました。しかし、この異例の事態に、法曹界からは手続きの正当性に対する疑問の声が上がり、波紋が広がっています。現職大統領の逮捕・起訴という重大な決断を下すに至った背景と、今後の韓国政界の行方を探ります。

疑問視される起訴の手続き

今回の起訴劇で最も問題視されているのは、手続きの妥当性です。元光州地検順天支庁長の金鍾旻(キム・ジョンミン)弁護士は、「現職大統領を内乱首謀で起訴するという重大な事件であるにもかかわらず、手続き上の問題が幾度となく指摘されている」と警鐘を鳴らしています。特に、内乱罪の捜査権限を巡る議論は大きな焦点となっています。

公捜処の捜査権限に疑問符

現行法では、内乱罪の捜査権は警察にあり、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)や検察にはありません。公捜処は「職権乱用に関わるため内乱罪を捜査できる」と主張していますが、この解釈には多くの法曹関係者から異論が出ています。「職権乱用という比較的軽い犯罪を根拠に、死刑または無期懲役という極刑が科される可能性のある内乱罪を捜査するのは本末転倒だ」という批判の声が上がっています。

altalt(写真:朝鮮日報日本語版) 4回目の弾劾審判に臨む尹大統領と沈雨廷検察総長。緊迫した表情が見て取れます。

尹大統領の陳述拒否と関係者証言の変遷

さらに、尹大統領自身は公捜処の取り調べに対し、200ページに及ぶ質問全てに陳述を拒否し、調書への押印も拒否しました。関係者の証言も当初の内容から変化している部分があり、事実関係の確定にはさらなる調査が必要との指摘もあります。金鍾旻弁護士は「大統領本人の陳述が一度もない状態で起訴するのはあまりに性急な判断だ」と述べ、憲法裁判所や国政調査特別委員会での関係者証言の変遷についても言及しています。

検察内部からも懸念の声

検察内部からも、拙速な起訴に対する懸念の声が上がっています。ある部長検事は「公捜処の捜査に問題があるならば、改めて最初から捜査をやり直すべきだ」と主張。別の中間幹部クラスの検事は、今回の起訴が検察の「起訴庁」化を招きかねないと危惧しています。

警察との連携不足も問題視

また、警察との連携不足も問題点として挙げられています。ある検察幹部は、「警察と検察が共同捜査本部を立ち上げていれば、捜査権限の問題も解消され、スムーズな起訴が可能だったはずだ」と指摘。公捜処主導の捜査は事実上機能不全に陥り、尹大統領の逮捕という「パフォーマンス」だけが独り歩きした結果、事態が複雑化したと分析しています。

altalt検察総長時代の尹大統領。今回の起訴劇は韓国政界に大きな衝撃を与えています。

今後の韓国政界はどうなる?

今回の起訴は、韓国政界に大きな混乱と不確実性をもたらすことは必至です。今後の裁判の行方、そして韓国政治の安定を左右する重要な局面を迎えています。 国民の関心は、一連の捜査と起訴が政治的な思惑に影響されていないか、そして真実はどこにあるのか、という点に注がれています。