埼玉県八潮市で県道が陥没し、走行中のトラックが転落した事故は29日午前11時現在、運転席に残されたままの男性運転手の救出活動が続いている。トラックの荷台部分は同日未明に引き上げられたが、近くでは新たな陥没も発生し、地中のガス管が破損する恐れがあるとして、市などは半径200メートルの約200世帯に避難勧告を出した。
最初の陥没は28日午前9時50分頃、八潮市二丁目の県道交差点の中央付近で直径約10メートル、深さ約10メートルにわたって発生し、走っていたトラックが落下した。男性は事故後、数時間は会話ができたが、その後、土砂が運転席付近に流れ込み、救助隊が近づけない状況になっている。
警察や消防によるクレーンなどを使った救出作業で、29日午前1時頃にトラックの荷台部分のみが引き上げられたが、運転席部分は穴の中に残ったままとなった。穴には下水や地下水とみられる水が流れ込んでおり、排水作業を進めながらの救出活動が続いている。
29日午前1時過ぎには現場近くで新たな陥没が発生した。消防によると、長さ約10メートル、幅約7メートルで、深さは測定できていないがトラックが落下した最初の穴とつながっているという。地中のガス管が破損した場合、ガス漏れが発生する恐れがあるとして、市などが周辺住民らに避難を呼びかけた。
多くの住民が近くの八潮市役所などで一夜を明かした。陥没現場近くに住む男子大学生(20)は「こんなに大事になるとは思わなかった。命を守ることを最優先にしたい」と話した。会社員男性(20)は「家の近くも陥没するかもと考えると心配。家にしばらく帰れないかもしれない」と不安そうな表情を見せた。
県によると、何らかの理由で破損した下水道管に土砂が流れ込み、地中に空洞が生じ、陥没したとみられる。この影響で下水道管がふさがっている可能性が高く、上流地域で使い続けると下水が噴き出す恐れがあるとして、県はさいたま市の一部など9市3町の約120万人に洗濯や風呂の使用を控えるよう呼びかけた。
県は29日朝、対策会議を開き、工場など大口の利用者に水の利用を控えるよう要請する方針を確認した。大野元裕知事は会議後、記者団に「影響の長期化が懸念される。企業や施設に可能な限りの協力をお願いしている」と述べた。