美しい星模様の甲羅を持つビルマホシガメ。絶滅危惧種に指定されているこの希少なカメをめぐり、サンシャイン水族館の元館長らが書類送検された事件は、大きな波紋を広げている。事件の舞台は東京・池袋のサンシャイン水族館、そして遠く離れた沖縄の小さな離島、水納島。一体何が起こったのか、詳しく見ていこう。
サンシャイン水族館の虚偽報告:20年にわたる隠蔽工作
警視庁の発表によると、サンシャイン水族館の元館長らは、密輸されたビルマホシガメの飼育数を国に偽って報告し、管理費を不正に受給していた疑いが持たれている。2003年以降、沖縄県水納島の夫婦にカメを無償譲渡していたにもかかわらず、飼育を続けていると虚偽の報告を続け、約190万円の管理費を不正に得ていたという。元館長らは「他の動物の飼育費に充てた」と供述し、容疑を認めているとのことだ。
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この事件は、単なる金銭問題にとどまらず、サンシャイン水族館の信頼を大きく揺るがすものだ。20年以上にわたる隠蔽工作は、組織的な不正を疑わせるに十分であり、水族館の運営体制の見直しも迫られるだろう。「日本動物園水族館協会」(JAZA)の専門家、山田一郎氏(仮名)は、「この事件は、動物園・水族館における動物管理の透明性を改めて問うものだ。飼育動物の適切な管理と情報公開は、社会からの信頼を得る上で不可欠である」と指摘する。
水納島の夫婦:希少ガメ譲渡の背景に何があったのか
事件のもう一つの舞台は、沖縄県の本部半島沖合に浮かぶ小さな離島、水納島。サンシャイン水族館からビルマホシガメを譲り受けたのは、この島でダイビングショップを営む50代の夫婦だ。妻は元サンシャイン水族館職員で、かつての同僚を通じてカメを譲り受けたという。
地元住民の間では、「動物好きな夫婦で、悪巧みをするような人には見えない」との声も聞かれる。しかし、絶滅危惧種であるビルマホシガメの譲渡には、厳格なルールが存在する。夫婦がこれらのルールを認識していたのか、譲渡の経緯に不正はなかったのか、今後の捜査の進展が待たれる。
ビルマホシガメ:密輸と違法取引の実態
ビルマホシガメは、ミャンマーや中国などに生息するリクガメで、美しい星模様の甲羅が特徴だ。その希少性から密輸や違法取引の対象となり、インターネット上でも高値で取引されているという。都内のペットショップ関係者によると、「安い個体でも20万円程度、メスでは50万円を超えることもある」という。乱獲により野生下では絶滅したとされており、保護の重要性がますます高まっている。
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事件の真相究明と今後の課題
今回の事件は、絶滅危惧種の保護、動物園・水族館の管理体制、そして違法取引の実態など、様々な問題を浮き彫りにした。関係当局による徹底的な捜査と真相究明が求められるとともに、再発防止に向けた取り組みも重要となるだろう。私たちは、美しい自然と貴重な生き物を守るために、何ができるのか、改めて考えなければならない。