アメリカ合衆国ドナルド・トランプ大統領の2期目政権で、実業家のイーロン・マスク氏が政府効率化省(DOGE)の長官に就任したことが波紋を広げている。国民の反応は冷ややかで、キニピアック大学の世論調査によると、53%がマスク氏のDOGE長官就任を「支持しない」と回答。マスク氏による政権への影響力拡大に懸念の声が上がっている。
マスク氏、巨額の選挙資金投入でトランプ氏勝利に貢献
マスク氏は2024年大統領選挙で、2億9000万ドル(約450億円)以上をトランプ氏の選挙キャンペーンに投入。CNNの報道によれば、この巨額な資金提供がトランプ氏の再選に大きく貢献したとされている。選挙期間中、マスク氏は行財政改革を目的としたDOGEの設立をトランプ氏に提言し、承認を得ていた。さらに、激戦州では、署名活動への賛同者の中から毎日1人に100万ドルを支払うという大規模キャンペーンを展開し、有権者の関心を集めた。
alt=イーロン・マスク氏、トランプ大統領就任式典に出席
DOGE長官として政府歳出・人員削減に着手、国民の懸念高まる
1月20日のトランプ政権発足後、マスク氏はホワイトハウスへの出入りを頻繁にし、側近を関連機関に派遣するなど、政権中枢への影響力を強めている。連邦政府の歳出・人事システムへのアクセス権限を持ち、歳出・人員の大幅な削減を目指している。行財政改革自体は国民の支持を得ているものの、マスク氏が自身の企業群や富裕層に有利な「改革」を行うのではないかという疑念が広がっている。
世論調査で不支持が過半数、民主党支持層では9割に
キニピアック大学が1月23日から27日にかけて実施した世論調査では、マスク氏の政権への影響力拡大について、53%が不支持、39%が支持という結果になった。民主党支持層では不支持が9割に達し、無党派層でも56%が不支持を表明。共和党支持層でも約2割が不支持を表明するなど、党派を超えて懸念が広がっている。
専門家の見解:改革の透明性確保が重要
政治アナリストの佐藤一郎氏(仮名)は、「マスク氏の改革案には、無駄な支出を削減し、政府の効率性を高めるという点で期待できる部分もある」としながらも、「改革のプロセスや内容の透明性を確保し、国民の理解を得ることが重要だ。そうでなければ、国民の不信感を増幅させ、改革の効果を損なう可能性がある」と指摘する。
トランプ大統領の支持率は46%、民主党の低迷続く
一方、トランプ大統領自身の支持率は46%で、不支持の43%を上回った。就任当初としては異例な低水準だが、これは1期目と同様の傾向。注目すべきは、民主党の好感度が31%と低迷している点だ。2月1日に新たな党全国委員長を選出した民主党だが、党勢回復への道のりは険しいと言える。今後の政権運営、そしてマスク氏のDOGE長官としての動向に、国民の厳しい目が注がれている。