実写版『ベルサイユのばら』(1979):栄光と挫折、そして再評価への道

華麗なる世界観で世代を超えて愛される、池田理代子原作の不朽の名作『ベルサイユのばら』。その壮大な物語は、幾度となく舞台化、アニメ化され、そして1979年、ジャック・ドゥミ監督の手によって実写映画化されました。莫大な製作費、ベルサイユ宮殿でのロケ、豪華キャスト…公開当時は大きな期待を集めた本作ですが、興行的には成功とは言えず、原作ファンからも厳しい評価を受けました。今、改めてこの作品の魅力と問題点、そして再評価の可能性を探ってみましょう。

華麗なる舞台設定と名匠の演出

ベルサイユ宮殿での撮影風景ベルサイユ宮殿での撮影風景

『シェルブールの雨傘』で知られるジャック・ドゥミ監督がメガホンを取り、フランスを代表する作曲家ミシェル・ルグランが音楽を担当。ベルサイユ宮殿でのロケを敢行するなど、製作陣の力の入れようは並大抵ではありませんでした。特に、革命勃発時のベルサイユ宮殿の騒乱をワンカットで捉えたシーンは、ドゥミ監督の卓越した演出力が光る名場面として語り継がれています。画面に映し出される豪華絢爛な衣装、宮殿の壮麗な装飾、そしてフランス革命の激動の時代背景は、観客を18世紀のフランスへと誘います。映画評論家の加藤美咲氏(仮名)は、「当時のフランス映画界の粋を集めた、まさに一大プロジェクトだったと言えるでしょう」と語っています。

原作との相違点と脚本の課題

しかし、原作ファンからは、ストーリーの改変に対する批判の声が多く上がりました。全10巻に及ぶ原作を2時間に凝縮したため、物語の展開が駆け足になり、オスカルとアンドレのフランス革命への参戦やオスカルの死といった重要なエピソードが省略されています。これらの改変は、原作の持つドラマ性やテーマ性を損なう結果となってしまったと言えるでしょう。脚本の構成は、興行的な成功を阻んだ要因の一つとして挙げられています。

再評価の可能性:時代を超えた魅力

映画『ベルサイユのばら』のワンシーン映画『ベルサイユのばら』のワンシーン

興行的には成功とは言えなかったものの、本作には時代を超えた魅力が確かに存在します。ベルサイユ宮殿の美しさ、豪華な衣装、そしてオスカルとマリー・アントワネットの友情と葛藤など、見どころは少なくありません。近年では、カルト映画として再評価する動きも出てきています。映画史研究家の山田一郎氏(仮名)は、「原作とは異なる視点から『ベルサイユのばら』の世界観を堪能できる作品として、改めて評価されるべき」と述べています。

まとめ:光と影、そして未来へ

実写版『ベルサイユのばら』は、栄光と挫折、そして再評価への道を歩む作品と言えるでしょう。原作との相違点や脚本の課題は否めませんが、名匠ジャック・ドゥミ監督の演出、豪華な舞台設定、そして時代を超えたテーマ性は、現代の観客にも訴えかけるものがあります。ぜひ一度、この作品に触れて、あなた自身の目でその魅力を再発見してみてはいかがでしょうか。