現代社会において、スマートフォン、テレビ、ソーシャルメディアは私たちの日常生活の大部分を占め、絶え間なく情報が流れ込んできます。政治、経済、社会問題からゴシップまで、あらゆるニュースが瞬時に更新される中で、「世の中の動きを知っておかなければ」という無言のプレッシャーを感じ、毎日ニュースをチェックする習慣が当たり前になっている人は少なくないでしょう。しかし、「依存のプロ」であるGoogleとYouTube出身の著者が提唱する、この情報過多時代を賢く生き抜くための「完璧な習慣」は、従来の常識を覆します。本稿では、世界で累計30万部を突破した書籍『とっぱらう――自分の時間を取り戻す「完璧な習慣」』をもとに、ニュースとの付き合い方を再考し、私たち自身の時間を取り戻す方法を解説します。
「そんなことも知らないの?」:情報へのプレッシャーと優越感の罠
「え、そんなことも知らないの?」――もしそう言われた経験があれば、情報へのプレッシャーがいかに強いものかお分かりでしょう。インターネット上では、「世の中のことをちゃんと知っておくのが当たり前」「なんでも知らない人は価値がない」「少しでも考えが違っていたら、そいつは終わり」といった攻撃的なスタンスの人々が散見されます。このような環境下で、多くの人が「ニュースをチェックしている自分」に優越感や安心感を抱きがちです。しかし、その行為が本当に自分自身の価値を高め、有意義な時間につながっているのか、立ち止まって考える必要があるかもしれません。
「毎日ニュースを見るべき」という「神話」を疑う
グーグル出身のジェイク・ナップとユーチューブ出身のジョン・ゼラツキーが提唱する多忙な毎日を乗りこなす戦略をまとめた『とっぱらう』には、こう書かれています。「そもそもニュース速報という考え自体が、『世界中で起こっていることをいますぐ知るべきだ』という、強力な神話のうえに成り立っている。賢明な人や責任ある人、大人はニュースを見るものと決まっている」。彼らがニュースを毎日見る必要性をそこまで感じていないという事実は、世間一般の「エリートは世の中のすべてを把握しているべき」という偏見を打ち破ります。つまり、日々の情報洪水に溺れることなく、本当に必要な情報だけを選び取る「情報の取捨選択」こそが、現代人に求められるスキルなのです。
スマートフォンでニュースをチェックする現代人:情報過多対策の必要性
なぜ「血が流されればトップニュース」なのか:ネガティブ情報の洪水
ニュースを毎日見るのは正直しんどいと感じる時があります。なぜなら、ネット上を賑わせるのはいつだって、汚職、紛争、不倫、特定の人物への批判といったネガティブな話題ばかりだからです。「血が流されればトップニュースになる」という言葉が示す通り、ニュースの多くは悪い知らせで構成されており、不安をかき立てる要素が多分に含まれています。今日の新聞やよく見るニュースサイトを開き、主要ニュースの見出しを一つひとつ批判的に検討してみてください。それらの見出しが、あなたが今日下す決定と関係があるのか、明日、来週、来月にまだ意味があるものなのか。そう問うことで、いかに緊急でない、あるいはどうでもいいニュースが多いかに気づくでしょう。疲労感やストレスを軽減するためにも、ニュースとの適切な距離感を保つことは、心の健康にとって非常に重要です。
時間を取り戻す「完璧な習慣」:ニュースは週に一度まとめて読む
では、どのようにしてこの情報過多の時代を乗りこなせば良いのでしょうか。著者らが実践し、推奨するのは「ニュースは週に一度まとめて読む」という戦術です。『とっぱらう』には、「ニュースをいっさい見るなとは言わないが、週に一度まとめて読むことを勧めたい。これよりも頻度を下げると、文明社会に背を向けて洋上暮らしをしているような気分になるし、頻度を上げると頭がもやに包まれて、目先のことにしか頭がまわらなくなる」とあります。本当に緊急性の高いニュースであれば、自然と耳に入ってくるものです。それ以外の、緊急性の低いニュースや、どうでもいいニュースに毎日翻弄される必要はありません。特定の曜日と時間を決めて、信頼できるニュースサイトや新聞で一週間分の主要な出来事をまとめて確認する。このシンプルな「習慣化」により、あなたは24時間年中無休のニュース速報の嵐から脱却し、自分のための貴重な時間を生産性向上や自己成長のために活用できるようになるでしょう。
情報化が進む現代において、私たちは無意識のうちに多くの時間を情報の消費に費やし、心身の疲労や集中力の低下に悩まされがちです。しかし、元Google・YouTubeのプロフェッショナルが提唱する「ニュースを週に一度まとめて読む」というシンプルな習慣を取り入れることで、情報の渦から解放され、より有意義な時間の使い方を見出すことができます。このデジタルデトックスの習慣は、情報リテラシーを高め、ストレスを軽減し、最終的には私たちのウェルビーイング向上に貢献するはずです。ぜひ今日から、この「完璧な習慣」を試してみてはいかがでしょうか。
参考文献:
- ジェイク・ナップ, ジョン・ゼラツキー. 『とっぱらう――自分の時間を取り戻す「完璧な習慣」』. 構成/ダイヤモンド社・秋岡敬子.





