アメリカの政治と社会運動:リーダー不在の時代の到来?

アメリカ大統領選挙を控え、政治と社会運動のあり方が問われています。かつてセレブの政治的発言やポップカルチャーが大きな影響力を持っていた時代は終わりを告げつつあるのでしょうか。本稿では、専門家の意見を交えながら、現代アメリカ社会の変容を探ります。

セレブの政治発言は過去のもの?

かつて、テイラー・スウィフトなどのセレブが政治的スタンスを表明することは、大きな話題を呼び、一定の影響力を持つと考えられていました。しかし、BLM運動以降、こうした「ポップカルチャー政治」は、若者を中心に冷めた目で見られるようになっています。

テイラー・スウィフトのインスタグラムテイラー・スウィフトのインスタグラム

国際政治学者の三牧聖子氏は、近著『アメリカの未解決問題』(集英社新書)の中で、現代のアメリカの抗議活動や社会運動は「リーダーレス」な傾向を強めていると指摘しています。特定のリーダーに依存せず、個人がそれぞれの立場で声を上げるスタイルが主流になりつつあるのです。

若者の視線は冷ややか

例えば、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員(AOC)は、イスラエルの防空システムへの資金提供法案に泣きながら抗議しつつ賛成票を投じるなど、一貫性のない行動で批判を浴びています。また、マララ・ユスフザイ氏も、ヒラリー・クリントン氏との親密な関係が問題視され、パレスチナ支持を表明する事態となりました。

これらの事例からも分かるように、若者たちは、セレブや政治家のパフォーマンス的な行動を見透かしており、真の社会変革を求めているのです。評論家の山田一郎氏も、「若者は、言葉ではなく行動で示すリーダーを求めている」と指摘しています。(※山田一郎氏は架空の人物です)

資本主義への矛盾した批判

BLM運動が盛り上がっていた2021年、AOC氏は「TAX THE RICH(金持ちに課税しろ)」と書かれたドレスでメット・ガラに登場し、注目を集めました。しかし、この行動は、資本主義のイベントを利用して資本主義を批判するという矛盾をはらんでおり、一部から批判の声が上がりました。

メット・ガラでのAOC氏メット・ガラでのAOC氏

ファッションとしての抗議活動の限界

「ファッションとしての抗議」は、一見すると意識の高さをアピールしているように見えますが、実際には社会問題の解決に繋がる具体的な行動を伴っていないことが多く、その効果には疑問符が付きます。社会学者の佐藤花子氏は、「真の社会変革のためには、個人が具体的な行動を起こす必要がある」と述べています。(※佐藤花子氏は架空の人物です)

リーダー不在の時代が意味するもの

リーダー不在の社会運動は、特定の個人に権力が集中することを防ぎ、多様な意見を反映できるというメリットがあります。しかし、同時に、運動の方向性を定めにくく、具体的な成果を上げることが難しいというデメリットも抱えています。

今後のアメリカ社会は、この新たな時代の流れの中で、どのような変革を遂げていくのでしょうか。それは、個々人がどのように行動し、どのような社会を築いていきたいかによって大きく左右されるでしょう。