アメリカ海軍が巨額の開発費を投じたにも関わらず、実戦配備されることのなかった実験艦「シー・シャドウ」。その革新的な技術と知られざる物語に迫ります。ステルス技術の粋を集めたその特異な形状、そして後のズムウォルト級駆逐艦への影響とは?
冷戦が生んだステルス技術の進化
冷戦時代、ソ連に対抗すべく、アメリカ軍はステルス技術の開発に莫大な投資を行いました。F-117 ナイトホークのようなステルス戦闘機の成功に続き、海軍もステルス艦の開発に着手。レーダーやソナーに探知されない革新的な艦艇を目指し、誕生したのが「シー・シャドウ」です。
シー・シャドウの全体像
「シー・シャドウ」:革新と挫折
5000万ドルもの開発費が投じられた「シー・シャドウ」は、実戦配備されることなくその生涯を終えました。しかし、その革新的な設計思想は後の艦艇開発に大きな影響を与えました。
ステルス性能の鍵:角張った船体
1980年代初頭、ロッキード・マーティンの先進開発部門「スカンクワークス」は、F-117で培ったステルス技術を艦艇に応用しようと試みました。当時スカンクワークスのディレクターであったベン・リッチ氏(※1)は、ステルス性能の高いコーティングと角張った形状を潜水艦に応用することを考案。小型モデルを製作し、音波の影響などを評価する実験室であるソニックチャンバーでテストを実施しました。
(※1) 架空の専門家
その結果、従来の潜水艦で主流の流線型の船体ではなく、角張った形状にすることで、ソナー信号を分散させ、艦艇自身が発する音も抑えられることが判明しました。この発見は、後の「シー・シャドウ」の設計に大きく貢献しました。
ズムウォルト級駆逐艦への影響
「シー・シャドウ」で得られた知見は、ズムウォルト級ステルス駆逐艦の開発に活かされました。ズムウォルト級駆逐艦の角張った形状は、「シー・シャドウ」の影響を色濃く反映しています。
沿岸作戦艦艇への技術継承
「シー・シャドウ」の技術は、沿岸作戦向けに設計されたカタマラン(双胴船)型の艦艇にも受け継がれています。ステルス性を重視した設計思想は、現代の艦艇開発においても重要な要素となっています。
未来のステルス技術への布石
「シー・シャドウ」は実戦配備こそされませんでしたが、ステルス技術の進化に大きく貢献しました。その革新的な設計思想は、未来の艦艇開発に新たな可能性を提示しています。
「シー・シャドウ」の物語は、技術革新の挑戦と挫折、そして未来への希望を象徴しています。