フジテレビを巡る一連の騒動は、未だ収束の兆しが見えません。スポンサーの多くは復帰に二の足を踏み、親会社であるフジ・メディア・ホールディングス(FMH)の業績は大幅な下方修正を余儀なくされています。この深刻な状況下、FMH経営陣に迫る「株主代表訴訟」のリスクについて、詳しく解説します。
株主代表訴訟とは?FMH経営陣への影響は?
業績悪化が顕著になると、企業経営において最も恐れるべき事態の一つが「株主代表訴訟」です。これは、役員の行為によって会社に損害が生じた場合、株主が会社に代わって役員個人に損害賠償を請求する訴訟です。
FMHの場合、2025年3月期の連結純利益は前期比74%減と予想され、フジテレビ単体では赤字転落の可能性も報じられています。仮に株主代表訴訟が提起され、経営陣の責任が認められた場合、巨額の賠償金を支払う必要が生じ、最悪の場合、自己破産に追い込まれる可能性も否定できません。
alt フジテレビ本社ビル
訴訟を起こすのに必要な株式はわずか1株。半年以上保有している株主であれば誰でも提訴できるため、ハードルは決して高くありません。まずは株主が会社に対して役員を訴えるよう要求し、会社が60日以内に対応しない場合、株主が自ら訴訟を起こすことができます。
賠償金額は原則無制限。東京電力の元経営陣に対する株主代表訴訟では、13兆円を超える賠償命令が出た判例もあります。 FMHのケースではここまでの金額にはならないと考えられますが、それでも数百億円規模の損害が発生しているとの報道もあり、事態の長期化に伴い、損害額はさらに膨らむ可能性があります。
経営陣の責任、どこまで問われる?
現在のFMH取締役は15名。仮に株主代表訴訟で経営陣の責任が問われた場合、一人当たり数十億円以上の賠償責任を負う可能性も想定されます。個人資産で支払えない場合、自己破産という最悪の事態も想定しておく必要があります。
企業法務に詳しい山田一郎弁護士(仮名)は、「株主代表訴訟は経営判断の誤りを問うものではありません。しかし、明らかな違法行為や善管注意義務違反があれば、経営陣の責任は免れません。今回のケースでは、経営陣の情報収集体制や危機管理能力が問われる可能性が高いでしょう」と指摘しています。
alt 株主総会のイメージ
仮に賠償金を支払えなかった場合、自己破産の手続きが必要となります。これは、保有する財産を全て手放し、残りの債務を免除してもらう手続きです。過去には、食品衛生問題で株主代表訴訟を起こされた外食チェーンの役員が、巨額の賠償命令を受け、自己破産した事例も存在します。
フジテレビの未来は?
フジテレビを巡る問題は、単なる企業の不祥事にとどまらず、日本のメディア業界全体への警鐘と言えるでしょう。今後の展開次第では、メディアの信頼性やガバナンスの在り方についても議論が深まることが予想されます。
FMH経営陣は、株主代表訴訟のリスクを真剣に受け止め、適切な対応策を講じる必要があります。同時に、再発防止策を徹底し、企業としての信頼回復に全力を尽くすことが求められます。