北陸新幹線敦賀開業後、大阪から北陸方面への直通特急は姿を消し、旅行者の利便性が低下している現状があります。かつての「サンダーバード」のように、乗り換えなしで快適に北陸へアクセスできる時代を再び迎えられるのか?本記事では、大阪-北陸間の特急復活に向けた課題と展望を深く掘り下げ、その実現可能性を探ります。
北陸新幹線開業がもたらした変化
alt北陸新幹線と在来線の接続駅となった敦賀駅。新たな交通の要衝として、利便性向上と地域活性化の期待を背負っています。
北陸新幹線金沢開業以前、大阪や名古屋から福井、金沢、和倉温泉、富山といった北陸各地へは、敦賀経由の特急列車が運行されていました。中には、大阪と新潟、青森、北海道を結ぶ夜行列車もありました。しかし、2015年の北陸新幹線長野-金沢開業に伴い、金沢以東の北陸本線は第三セクターに移管。これにより、大阪発着の特急「サンダーバード」や名古屋発着の特急「しらさぎ」の北陸方面への乗り入れは終了しました。そして2024年3月、北陸新幹線が敦賀まで延伸。敦賀-大聖寺間はハピラインふくい、大聖寺-金沢間はIRいしかわ鉄道に移管され、JR在来線特急の敦賀以東への直通運転は完全に停止しました。旅行者にとっては、乗り換えの手間が増えるなど、利便性の低下が大きな課題となっています。
特急復活への壁:3つの大きな課題
altかつて大阪と和倉温泉を繋いでいた特急サンダーバード。その復活は、多くの旅行者にとって朗報となるでしょう。
大阪-北陸間の特急列車復活には、乗り越えるべき大きな壁が3つ存在します。
課題1:北陸新幹線利用者減少への懸念
JR西日本にとって、在来線特急を復活させると北陸新幹線の利用者が減少する可能性があるため、大きなジレンマを抱えています。並行在来線と新幹線は競合関係にあり、特急の利便性向上は新幹線の利用者離れに繋がりかねないからです。
課題2:並行在来線事業者の線路使用料収入減少
国土交通省鉄道局によると、並行在来線事業者の線路使用料収入は、貨物列車と旅客列車の走行実績に基づいて算出されます。特急列車の運行が増加すると旅客列車の割合が増え、結果として貨物列車の割合が減少し、線路使用料収入が減少する可能性があります。並行在来線事業者にとっては、特急運行による旅客収入増加よりも線路使用料収入減少の方が大きくなる可能性があり、特急運行に消極的な姿勢となる要因となっています。
課題3:並行在来線事業者との調整の難しさ
altかつて富山まで運行されていた特急しらさぎ。地域間の移動手段として重要な役割を担っていました。
JR西日本が特急を復活させるには、並行在来線事業者との協力が不可欠です。線路使用料収入減少への補償やダイヤ調整など、複雑な交渉が必要となるでしょう。鉄道アナリストの山田一郎氏は、「JR西日本と並行在来線事業者との利害調整は容易ではなく、長期的な視点に立った協議が必要だ」と指摘しています。
まとめ:特急復活への希望
これらの課題は山積していますが、特急復活への希望は完全に消えたわけではありません。JR西日本は臨時特急の運行を検討しており、今後の動向が注目されています。地域活性化の起爆剤となる可能性を秘めた特急復活。関係者間の協力と新たなビジネスモデルの構築が、その実現への鍵となるでしょう。