北極圏は、地球温暖化の影響を最も顕著に受けている地域です。パリ協定の目標達成でも2100年には地球の気温が2.7℃上昇すると予測されており、北極圏の未来はどうなるのでしょうか? 本記事では、2.7℃上昇した場合の北極圏への影響について、最新の研究結果を交えながら解説します。
海氷消失:ホッキョクグマの棲み処がなくなる?
地球温暖化による海氷面積の減少は深刻な問題です。特に9月は減少量が最大となり、1.5℃上昇の場合、2030~2050年には海氷が消失する可能性があるとされています。 2.7℃上昇の場合はさらに深刻で、多年氷(数年間溶けない厚い氷)までも消失すると予測されています。多年氷はホッキョクグマやアザラシの重要な生息地であり、その消失は生態系に壊滅的な打撃を与えます。
北極の海氷面積、グリーンランドの融解面積、永久凍土層の変化
北極海に長期間氷がない状態は、約13万年前の最後の間氷期まで遡ります。近年の海氷面積の減少は、観測史上例を見ない速さで進行しています。
グリーンランド氷床融解:海面上昇加速の懸念
グリーンランドの氷床融解も加速すると予測されます。 1.5℃上昇では表面温度が0℃を超える地域が2倍以上に増加しますが、2.7℃上昇では約4倍に増加するとされています。 氷床融解は海面上昇の大きな要因となるため、世界的な脅威となります。
グリーンランドの融解面積の変化
氷床融解によるアルベド(太陽光反射率)の低下は、地表面の温度上昇をさらに促進し、悪循環を生み出します。専門家の中には、「グリーンランド氷床の融解は、 tipping point(臨界点)を超える可能性がある」と警鐘を鳴らす声もあります。
永久凍土融解:温室効果ガス放出の悪循環
北半球の高緯度地域に広がる永久凍土層も、温暖化の影響を受けます。1.5℃上昇で約25%減少、2.7℃上昇では約半分が消失すると予測されています。永久凍土には大量の二酸化炭素やメタンが閉じ込められており、融解によって大気中に放出されることで、更なる温暖化を招く悪循環に陥ります。
永久凍土層の融解と温室効果ガス放出
IPCCの第6次評価報告書では、1.5℃上昇の場合の炭素予算は約140ギガトンとされています。永久凍土の融解は、この炭素予算を圧迫する大きな要因となるでしょう。
生態系と人間社会への影響:北極圏の未来
海氷、氷床、永久凍土の融解は、北極圏の生態系に甚大な影響を及ぼします。海洋生物の生息環境の悪化、ホッキョクグマなどの絶滅リスクの増加、海鳥の繁殖への影響などが懸念されています。
グリーンランドの氷床融解と海面上昇
また、人間社会への影響も無視できません。永久凍土の融解による地盤沈下は、インフラの崩壊リスクを高めます。海氷面積の減少は、海運や漁業にも影響を与えます。
地球温暖化の北極圏への脅威
北極圏の危機は、地球全体の問題です。国際社会が協力し、温室効果ガス排出削減に向けた取り組みを強化することが、北極圏の未来を守るために不可欠です。