2024年衆院選において、公明党の票がなければ自民党候補が当選ラインを下回る「52議席」――この数字が示す深刻な事態は、長年続いた自民・公明連立政権の電撃的な解消がもたらす影響を浮き彫りにしています。選挙予測の専門家であるJX通信社代表取締役の米重克洋氏が最新データを基に分析したこの実態は、今後の日本政治の行方を占う上で極めて重要です。本稿では、公明党離脱が自民党の選挙戦略に与える具体的な影響と、公明党支持層の動向について詳細に掘り下げていきます。
連立離脱への評価:自民・公明支持層で異なる見解
米重氏らが2025年10月11・12日に実施した調査によると、公明党の連立離脱について「評価する」と答えた人は全体で50数パーセントに上りました。しかし、支持政党別に詳細を見ると、興味深い傾向が浮かび上がります。自民党支持層においては、連立離脱を評価する割合が全体よりも少なく、50パーセントを下回っていました。一方で、公明党支持層では、約8割近くが連立離脱を評価していることが判明しました。この対照的な数字は、それぞれの党の支持層内に、連立解消を歓迎する感情がマジョリティとして存在することを示唆しています。ただし、自民党支持層の中にも、「公明党との連携は重要だ」と考える層が一定数いることも明らかになりました。
JX通信社代表取締役の米重克洋氏。公明党の連立離脱と自民党の選挙戦略をデータに基づいて分析。
公明党の比例得票数に見る長期的な減少傾向
公明党の国政選挙における比例代表での得票数の推移は、長期的な右肩下がりの傾向が顕著です。米重氏が示したデータによれば、公明党は2005年の郵政選挙時に898万票というピークを記録して以降、一貫して減少傾向にあります。特に近年の衆議院選挙や参議院選挙では、得票数が600万票を切り、596万票、そして520万票台へと急激に減少しています。米重氏はこの数字について、「投票率の上下に対して変化があまり大きくないことを考慮すると、公明党の得票の大部分は、創価学会の強固な支持層からの票である可能性が高い」と分析しています。この減少は、今後の選挙戦における公明党の存在感と影響力に大きな課題を投げかけています。
「高市内閣」への公明党支持層の冷ややかな反応
仮に「高市内閣」が発足した場合の支持率調査でも、公明党支持層の明確なスタンスが示されました。全体では約50%が支持を表明したものの、支持政党別では顕著な違いが見られます。自民党支持層では7割以上が高い支持を示したのに対し、公明党支持層の支持率は2割台半ばにとどまり、約5割が不支持を表明しました。この結果から米重氏は、「公明党支持層は、連立解消後、もはや完全に野党的なスタンスへと変化しつつある」と指摘しています。これは、これまで自民党と協力体制を築いてきた公明党支持層が、政権運営に対する評価や政治的立場を大きく転換させていることを意味し、今後の政界再編にも影響を与える可能性を秘めています。
結論
公明党の連立離脱は、自民党が衆議院選挙で直面する「52議席」という具体的な課題を浮き彫りにしました。公明党支持層が連立解消を高く評価し、自民党が主導する内閣への支持が低いというデータは、かつての強固な協力関係が大きく揺らいでいることを示しています。公明党の比例得票数の減少傾向と相まって、自民党は今後の選挙戦略において、公明党票に依存しない新たな多数派形成の道を模索する必要があるでしょう。この政治的転換は、日本の政界に新たな局面をもたらし、各党の戦略と国民の選択に大きな影響を与えることになります。
参考文献
- 米重克洋氏によるJX通信社の調査データ
- 文藝春秋PLUS 2025年10月18日配信記事