11月5日は、国連が制定した「世界津波の日」である。
9月、10月に日本列島を襲った大型台風と大雨は東日本と北日本に甚大な被害を及ぼした。
行方不明者の捜索、復旧作業、被災者支援と生活再建など山積する課題に取り組んでいる最中である。昨年7月の西日本豪雨による多くの被災地も復旧・復興の途上である。
「今は津波にまで意識が向かない」というのが、被災地の実情だろう。
しかし、台風19号が関東に上陸した10月12日、暴風雨のピークと重なって千葉県では最大震度4の地震が発生した。地震による被害はなかったとはいえ、重く受け止めなければならない。
自然現象が人間の都合に配慮してくれるのであれば、災害は起きない。台風と豪雨で厳しい状況であるからこそ「複合災害」を視野に入れて、地震、津波に対する備えと心構えを新たにしたい。
台風と大雨が引き起こした土砂崩れ、河川氾濫による死者・行方不明者は100人を超える。平成23年の東日本大震災では1万8千人を超える命が大津波の犠牲になった。
津波、土砂災害、洪水や高潮など「水の猛威」から命を守る手立てが「避難」以外にはないことを改めて心に刻む必要がある。
津波の場合は地震発生が避難開始の合図になる。大きな揺れを感じたら、その時点で各自が「警戒レベル5」の状況だと判断し、できるだけ迅速に高台などの安全な場所へ「迷わず逃げる」ことが何よりも重要だ。
南海トラフ地震などで津波による浸水が想定される地域の多くは河川の河口域でもある。津波に対する避難意識と行動の徹底は、台風や豪雨による河川の氾濫から命を守ることにも通じる。
土砂災害や洪水による人命の被害は、ほとんどが避難行動の遅れや迷いに起因する。山間部など津波の危険がない地域でも、できるだけ迅速に「迷わず逃げる」ことを徹底したい。
世界津波の日は、旧暦の11月5日に起きた安政南海地震(1854年)で多くの人命を救ったとされる「稲むらの火」の逸話にちなみ、日本が提案し国連総会で制定された。津波の脅威と避難の大切さを世界に発信し、次世代にも継承しなければならない。