多文化共生社会が進む日本では、外国人住民の数は増加の一途を辿っています。2024年6月時点で約359万人と、この20年間でほぼ倍増しました。こうした中、地域防災の新たな担い手として、外国人消防団員に注目が集まっています。彼らは、言葉の壁を越え、地域住民の安全を守るために活躍しています。本記事では、外国人消防団員の活動内容やその意義、そして今後の展望について詳しく解説します。
外国人消防団員の活躍:横浜市の事例
横浜市は2020年より外国人の消防団入団を積極的に推進し、全国最多の77人(2024年1月1日時点)の外国人消防団員が活躍しています。彼らの活動は、地域防災に大きな貢献をもたらしています。
中国から来日した馮剛さんは、スーパーで偶然見つけた募集チラシをきっかけに消防団に入団しました。「周囲の人を助けられるし、家族も守れる」と語る馮さんの言葉からは、消防団活動への強い使命感が感じられます。
また、中国福建省出身の中島由美さんは、「日本の社会とつながりたい、役に立ちたい」という思いから入団を決意しました。彼女のように、地域貢献への熱意を持つ外国人住民が多く、消防団活動は多文化共生を促進する役割も担っています。
横浜市の外国人消防団員・中島由美さんと南消防署消防団係の芦葉昇平係長
2人が所属する南消防団(横浜市南区)では、日本人団員と同じ訓練を受け、消火設備の取り扱いなどを学んでいます。火災現場への出場経験はまだないものの、防災訓練の支援や火災予防のPR活動など、地域に根差した活動に積極的に参加しています。
外国人防災指導チーム:言葉の壁を越えた防災教育
南消防団は、外国人住民への防災教育を強化するため、「外国人防災指導チーム」を2021年に発足させました。外国籍団員が母国語で消火器の使い方や119番通報の手順を指導することで、言葉の壁を越えた効果的な防災教育を実現しています。
南消防署消防団係の芦葉昇平係長は、「言葉が通じない外国人住民への防災教育は、外国籍団員の存在が不可欠」と語ります。119番通報に不安を抱える外国人住民にとって、母国語での指導は安心感につながり、緊急時の的確な対応を促します。
外国人消防団員の活動範囲:公権力の行使と課題
消防団員は非常勤特別職の地方公務員であるため、外国人消防団員の活動範囲は法律によって制限されています。消防車の運転や私有地への立ち入りなど、公権力の行使にあたる活動はできません。
機能別消防団:多様なニーズに対応した活動
こうした制限を踏まえ、特定の活動に従事する「外国人機能別消防団」を設立する自治体が増えています。例えば、愛川町では多言語機能別消防団が、泉佐野市では国際分団が設立され、避難誘導や通訳・翻訳など、それぞれの地域のニーズに合わせた活動を行っています。
草津市の事例:外国人機能別消防団の先駆け
2015年に滋賀県草津市で発足した「外国人機能別消防団」は、全国初の試みとして注目を集めました。草津市国際交流協会の中西まり子副会長は、外国人機能別消防団の設立に尽力し、多文化共生社会における防災の重要性を訴えています。
まとめ:地域防災の未来を担う外国人消防団員
外国人消防団員の活躍は、地域防災の強化だけでなく、多文化共生社会の実現にも大きく貢献しています。言葉の壁を越え、地域住民の安全を守る彼らの活動は、今後ますます重要性を増していくでしょう。外国人消防団員の活躍を通じて、より安全で安心な地域社会を築いていくことが期待されます。