なぜ東京では車が少ないのか?駐車場事情とインフラ整備の視点から紐解く

東京の街並みを歩くと、他の大都市と比べて車の数が少ないことに気づきます。美しい景観を保つ要因は、洗練された建築物だけではありません。今回は、東京で車が少ない理由を駐車場事情とインフラ整備の観点から探り、その独自の都市構造の魅力に迫ります。

東京の駐車場事情:高額な費用と限られたスペース

東京で車を所有する上で最大の障壁となるのが、高額な駐車場代と限られた駐車スペースです。地方都市では月額8,000~9,000円程度の駐車場も、東京ではその4倍以上が相場です。ニューヨークやシカゴのように路上駐車という選択肢もなく、マンションに駐車場が併設されている割合もわずか42%に留まります。

東京の路上駐車の様子東京の路上駐車の様子

目的地での駐車料金も高額で、1時間1,000円程度が一般的です。これらの費用が、車を持つことへの大きなハードルとなっています。

高級車を持つ富裕層ですら…

経済学者のソレンセン教授は、東京に住んでいた頃の裕福な友人の例を挙げています。彼らは高級車を所有していましたが、自宅近くに駐車場がなかったため、車に乗る際は公共交通機関で車庫まで行く必要がありました。結果的に、彼らは車に乗る機会が減り、日常生活では電車やタクシーを利用するようになったそうです。車を使うよりも安上がりだったからです。

日本のインフラ整備:市場原理に基づく独自の資金調達

東京で車が少ないもう一つの理由は、日本のインフラ整備の資金調達方法にあります。日本は税金による直接的な資金調達ではなく、市場原理に基づいてインフラ整備を行っています。

1950年代の日本の道路状況

1957年に日本政府の顧問を務めた米国の経済学者ラルフ・J・ワトキンスは、当時の日本の道路状況について「信じられないほど劣悪だ」と報告しています。舗装道路はわずか23%で、大阪と東京を結ぶ主要道路でさえ、3分の2しか舗装されていませんでした。

高速道路の建設の様子高速道路の建設の様子

この状況から、日本は独自の資金調達方法で高速道路網を整備していきました。 「都市交通計画研究所」の山田氏(仮名)は、「市場原理に基づく資金調達は、インフラ整備の効率化に貢献した一方で、利用料金の高騰を招いた可能性もある」と指摘しています。

東京の車事情:低い走行距離と効率的な交通システム

高額な駐車場代、限られた駐車スペース、そして独自のインフラ整備。これらの要因が重なり、日本の自動車所有率は比較的高いにもかかわらず、実際の走行距離は短くなっています。日本の車所有者は年間約6,000キロメートルしか運転せず、これは英国の平均の半分、米国の平均の3分の1程度です。

東京の交通システムは、電車やバスなどの公共交通機関が非常に発達しており、車を持たなくても快適に生活できるよう設計されています。この効率的な交通システムも、東京で車が少ない理由の一つと言えるでしょう。

まとめ:東京の独自の都市構造

高額な駐車場代と限られた駐車スペース、そして市場原理に基づくインフラ整備。これらの要因が、東京で車が少ない理由です。結果として、東京は独自の都市構造を形成し、公共交通機関が発達した、歩行者にとって快適な都市となっています。 東京を訪れる際は、ぜひその街並みを歩き、車が少ないことで生まれる独特の雰囲気を体感してみてください。