中国の核戦力増強:台湾有事への影響と日本の安全保障

中国の核戦力増強が世界的な懸念となっています。台湾への圧力を強める中国が核兵器を保有数を増やし続けている現状は、東アジアの安全保障にとってどのような意味を持つのでしょうか。本記事では、中国の核戦略の現状と今後の展望、そして日本への影響について解説します。

習近平指導部による核戦力増強の背景

中国の軍事パレードの様子。ミサイルなどが行進している。中国の軍事パレードの様子。ミサイルなどが行進している。

中国の核戦力増強は、習近平国家主席のリーダーシップの下で急速に進められています。専門家の中には、中国が2030年までに核弾頭保有数を現在の500発から1000発に倍増させる計画だと指摘する声もあります。カーネギー国際平和基金の趙通氏のような中国核戦略の専門家は、習近平主席が核戦力の増強によってアメリカ合衆国とその同盟国の抑止力を弱体化させ、中国の主張を通そうとしていると分析しています。

中国は、ロシアのウクライナ侵攻における核兵器の「抑止力」効果を目の当たりにし、台湾有事においても同様の戦略を用いる可能性があると趙氏は指摘します。つまり、台湾への武力行使に踏み切った際に、アメリカなどの介入を阻止するために核兵器による威嚇を行うシナリオも想定されるのです。

核戦力増強のタイムラインとロケット軍の役割

中国の核戦力増強は、習近平氏が国家主席に就任した2012年末頃から本格化しました。それまでの「精干有効(少量でも効果的)」という核政策から転換し、核弾頭保有数の増加だけでなく、運搬手段の近代化も積極的に進めています。

2015年には、核兵器と通常兵器の運用を担うロケット軍が新設され、陸海空軍と同等の地位に格上げされました。このロケット軍は、中国の核戦力近代化の鍵を握る存在であり、習近平主席はロケット軍に対し、核戦力増強のペースを加速させるよう指示を出しています。また、海軍に対しても海上における核抑止力の強化を命じており、陸海空の三位一体による核戦力増強が進められています。

中国の核戦略と米中関係の行方

習近平指導部は、中国の経済成長と軍事力の増強に伴い、アメリカをはじめとする西側諸国との対立が激化する可能性を認識していたと考えられます。「中華民族の偉大なる復興」というスローガンは、単なる経済発展だけでなく、軍事力強化による「強軍の夢」の実現も包含しているのです。

中国は、西側諸国が中国の台頭を脅威とみなし、敵対的な姿勢を強めると予想していました。こうした国際情勢の中で、中国は核戦力の増強を自国の安全保障を確保するための手段と位置付けているのです。防衛研究所の飯田将史主任研究官は、「中国の核戦力増強は、米国の核の傘に依存する日本にとっても重大な安全保障上の懸念事項だ」と指摘しています。今後の米中関係、そして東アジア情勢の行方は、中国の核戦略と密接に関連していると言えるでしょう。

まとめ:日本への影響と今後の展望

中国の核戦力増強は、台湾有事だけでなく、日本の安全保障にも大きな影響を及ぼします。中国の核戦略を理解し、適切な対応策を講じることは、日本にとって喫緊の課題です。今後、中国の核戦力増強の動向を注視していく必要があるでしょう。