日本の医療制度は世界的に見ても高い水準を誇っていますが、医師の育成システムには課題が残されていると言われています。本稿では、日本の医学生の教育システムにおける問題点と、理想的な医師像について考察します。
優秀な人材が教授になれない日本の大学
日本の大学では、新しい教授の人選を既存の教授陣が行うケースが多く、優秀すぎる人材が教授に選ばれにくいという現状があります。自分より優秀な人材が入ってくると、自身の立場が危うくなると考える教授もいるようです。
例えば、考古学者の吉村作治氏が早稲田大学でなかなか教授になれなかったのは有名な話です。吉村氏の業績と知名度を妬んだ他の教授たちが、教授選考を妨害したのではないかと言われています。
アメリカでは、ディーンと呼ばれる役職者が教授の人選を担当し、他の大学から優秀な教授をスカウトすることもあります。大学の評価は、どれだけ優秀な教授がいるかで決まるため、ディーンは優秀な人材を確保することに尽力します。
このような日米の教授選考システムの違いは、学問の発展に大きな影響を与えていると言えるでしょう。
考古学者
医学生はなぜ医学以外に無関心なのか?
日本の医学生は、医学の知識は豊富でも、人間性や社会性、教養に欠ける場合があると指摘されています。医師国家試験に合格すれば医者になることができますが、患者と向き合う上で必要なコミュニケーション能力や倫理観は、試験では測れません。
医学部での教育は専門知識に偏りがちで、人文科学や社会学などの教養を学ぶ機会が少ないことが原因の一つと考えられます。また、医学部入試の選抜方法も、暗記力や計算力に重点が置かれており、多様な人材育成の妨げになっている可能性があります。
理想的な医師像とは、単に医学知識が豊富なだけでなく、人間性豊かで、患者に寄り添える存在であるべきです。そのためには、医学以外の分野にも関心を持ち、幅広い知識や教養を身につけることが重要です。
理想の医師を育てるには
日本の医師育成システムを改善するためには、医学部入試の選抜方法を見直し、多様な能力を持つ学生を受け入れる必要があります。また、医学部教育においても、人文科学や社会学などの科目を充実させ、学生の人間性や社会性を育むことが大切です。
さらに、臨床研修制度を強化し、若手医師が経験豊富な指導医から実践的な指導を受けられるようにする必要があります。指導医には、医学知識だけでなく、倫理観やコミュニケーション能力についても指導する役割が求められます。
著名な医学教育者である山田太郎先生(仮名)は、「医師は、単なる医療技術者ではなく、患者の人生に深く関わる存在であることを自覚すべきだ」と述べています。 患者中心の医療を実現するためには、医師の育成システム全体を改革し、人間性豊かな医師を育成していく必要があると言えるでしょう。
医師と患者
まとめ
日本の医療の未来を担う医師を育成するためには、医学部入試、医学部教育、臨床研修の各段階における改革が不可欠です。医学知識だけでなく、人間性や社会性を育むことで、患者に寄り添える医師を育成し、より良い医療を実現していく必要があるでしょう。